内容説明
「ダーウィンよりも早く、フンボルトよりも前に、オーデュボンにも先んじて、マリア・シビラ・メーリアンは科学の発見を企ててヨーロッパから新世界に渡った。」それは1699年、彼女が52歳の年。アムステルダムで画家としての地位も確立した彼女を危険な旅へと駆り立てたのは、幼いころから続けてきた昆虫の変態の研究だった。1970年代以降、遺された絵や習作ノートが200年以上を経て世に出てから、ナチュラリストとしてのメーリアンの再評価がはじまった。なかでも注目されているのは、リンネ以前の時代、昆虫の定義すら定まっておらず、昆虫が象徴的観念や伝説と実体との混合物だった時代に、生物としての形態そのものを捉えていたことだ。環境との関りの中で生物を捉える生態学的な視点も、何世紀も時代に先駆けていた。著者は残された資料を渉猟し、メーリアン家の出版業と当時の商業文化、科学としての体系化以前の生物学の様相、アムステルダムという都市の役割、駆け込み寺となった宗教共同体の影響など、稀有な才能を形作った興味深い背景を掘り起こす。
目次
第1章 最も気高いイモムシ―フランクフルト・アム・マイン、一六四七‐一六六五年
第2章 小さな本の奇跡―フランクフルト・アム・マイン、ニュルンベルク、一六六五‐一六八六年
第3章 沼地や荒れ地に生きるもの―ウィーウェルト、一六八六‐一六九一年
第4章 この大いなる世界―アムステルダム、一六九一‐一六九九年
第5章 すさまじく、高価なる旅―スリナム、一六九九年
第6章 はるか野生に分け入って―スリナム、一七〇〇‐一七〇一年
第7章 アメリカ大陸にて描かれた最初にして最も不思議な作品―アムステルダム、一七〇一‐一七一七年
第8章 現代の社会はとても敏感―ヨーロッパ、ロシア、アメリカ大陸、一七一七‐一九〇二年
第9章 色がとても素晴らしいから―研究室で、フィールドで、一九〇二年‐現代
著者等紹介
トッド,キム[トッド,キム][Todd,Kim]
イェール大学卒業後、モンタナ大学で環境学の修士号(M.S.)、ノンフィクション創作の美術学修士号(M.F.A.)を取得し、現在は主にフリーライターとして活躍中。Orion Magazine、Sierra Magazine、Gristなどの雑誌に、環境に関する記事やエッセイを執筆している。『Tinkering with Eden,a Natural History of Exotics in America』は、PEN/Jerard AwardおよびSigurd Olson Nature Writing Awardを受賞。BooklistのTop Ten Science/Technical Books for 2001にも選ばれた。また、『Chrysalis,Maria Sibylla Merian and the Secrets of Metamorphosis』はLibrary JournalのBest science/technical books of 2007に選ばれている。現在、夫、双子の子どもたちとともにモンタナ州ミズーラに在住
屋代通子[ヤシロミチコ]
翻訳家。自然科学系翻訳に取り組むかたわら、被暴力体験のある若者の自立支援に携わり、その方面の仕事には、イギリス保健省・内務省・教育雇用省『子ども保護のためのワーキング・トゥギャザー』(共訳・医学書院)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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