内容説明
ポール・グッドマン、アントナン・アルトー、レニ・リーフェンシュタール、ヴァルター・ベンヤミン、ハンス=ユルゲン・ジーバーベルク、ロラン・バルト、エリアス・カネッティ―この7名の人物と作品から、著者は何を読み取ろうとしたのか。1980年、ソンタグの最も充実した時期に刊行された秀逸な批評集。
目次
ポール・グッドマン
アルトーへの道
ファシズムの魅力
土星の徴しの下に
ジーバーベルクのヒトラー
バルトの思い出
情熱としての精神
著者等紹介
ソンタグ,スーザン[ソンタグ,スーザン][Sontag,Susan]
1933‐2004。アメリカの作家・批評家。さらに四つの長編映画の脚本執筆と監督をし、アメリカとヨーロッパにおいて劇の演出も手がけた。その中には、包囲されたサラエヴォで上演されたベケットの『ゴドーを待ちながら』の演出も含まれる。2001年に「イェルサレム賞」を受賞
富山太佳夫[トミヤマタカオ]
1947年鳥取県に生まれる。1970年東京大学英文科卒業。1973年同大学大学院修士課程修了。現在青山学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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呼戯人
11
スーザン・ソンタグが亡くなってからどれくらい経つのだろう。この評論で取り上げられた主にドイツ語で仕事をした人々の作品を懐かしく思い出す。ヴァルター・ベンヤミンやエリアス・カネッティの作品は、それ自体スーザンの水準を大きく超え出ているが、ソンタグのこの作品もよくできた評論集である。土星の徴とはメランコリーのことだが、それに一番ふさわしい書き手はヴァルター・ベンヤミンである。メランコリー者に特有の複雑で象徴に満ちた詩的散文は私の心を強く捉えた。ソンタグもまたこのメランコリー独特の文体に魅せられていたのだ。2015/12/23
あなた
8
ソンタグは土星気質の人間としてのベンヤミンを切り開いていく。土星とはベンヤミンがテクスト解読の要とした憂鬱な人間の別の謂いでもある。必然的にそこからベンヤミンが遊民化していく姿も描きだされる。ソンタグはかなり明確にわかりやすくベンヤミンのひとつのイメージを打ち出している。バルトに関しても、美しいテクストを描いたバルトをさらに美しくつむぎながらもいとおしく描いている。『隠喩としての病い』を想起してもソンタグは対象化しえない「対象」への「いとおしさ」を軸に批評を織り成しているのではないだろうか2010/07/14
Sumichika3
4
リーフェンシュタールの審美主義が20世紀の映像表現における卓越した達成の一つだといえるだろう。とはいえ、誰しも、この達成が政治的文脈を離れては成立し得ないことは知っている。ソンタグは、歴史主義を援用するのではなく、NUBAの裸体美の力動感の美的表象に死の徴候を認め、驚くべきことに、芸術的な彼女の作品を、安手のポルノに死のイメージを供給する親衛隊の美学と並べてみせる。場違いな取り合わせ。殆どスキャンダラスな並列を通じて、美的表象と等価な力動感が、死の徴候を身に纏うことで成立していることを暴き出す
rinrin
0
【BOOK-121】2012/05/08