出版社内容情報
「わたしの主題は寛容である。もうすこしうまくいえば、たがいに異なる歴史・文化・アイデンティティをもつ人びとの集団の平和共存、である。」
本書は、現代アメリカのもっとも著名な政治理論家が、多文化主義社会における寛容とは何かを、簡潔でエレガントに論じた好著である。ウォルツァーはまず、多民族帝国、国際社会、多極共存・連合、国民国家、移民社会という、五つの異なる政治編制における寛容のあり方を歴史的に俯瞰し、こうした政治編制が内包しているさまざまな集団間の差異――権力、階級、ジェンダー、宗教、人種、エスニシティ――を、具体的に検討していく。
内容説明
寛容は差異を可能にし、差異は寛容を必要不可欠なものにする。ポストモダンの多元社会は、集団よりも個人の自由と自己決定を優先する傾向をもつ。だが「集団のコミットメントが崩壊したとしたら、いったい個人は何から逃れるというのだろうか。」近代性は個人と集団とのあいだの永続的な緊張を欠かすことができない。多元社会における寛容とは、個人の行動を動機づける普遍的な原理ではなく、さまざまな社会集団の差異を折衝するための政治的な実践として考察される。現代の政治理論への入門書としても最適な一冊である。
目次
序論 寛容についてどのように書くか
第1章 個人の態度と政治制度
第2章 五つの寛容体制
第3章 複雑な事例
第4章 実践的な係争点
第5章 近代の寛容とポストモダンの寛容
終章 アメリカ多文化主義への省察
著者等紹介
ウォルツァー,マイケル[ウォルツァー,マイケル][Walzer,Michael]
1935年、ニューヨークで生まれ育つ。現在、プリンストン高等研究所社会科学教授
大川正彦[オオカワマサヒコ]
1965年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士後期課程単位取得退学。政治理論・社会倫理学専攻。現在、東京外国語大学外国語学部助教授。修士(政治学)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちぃ
スズキパル
oasam