内容説明
16世紀イタリアのフリウリ地方に住む粉挽屋。その男の名はドメニコ・スカンデッラといったが、人びとからはメノッキオと呼ばれていた。白のチョッキ、白のマント、白麻の帽子をいつも身につけ、裁判に現われるのも、この白ずくめの服装だった。彼は教皇庁に告訴されていた、その肝をつぶすような異端のコスモロジー故に。彼は説く、「私が考え信じているのは、すべてはカオスである、すなわち、土、空気、水、火、などこれらの全体はカオスである。この全体は次第に塊りになっていった。ちょうど牛乳のなかからチーズの塊ができ、そこからうじ虫があらわれてくるように、このうじ虫のように出現してくるものが天使たちなのだ…」。二度の裁判を経て、ついに焚刑にされたメノッキオ。著者は、古文書館の完全な闇のなかから、一介の粉挽屋の生きたミクロコスモスを復元することに成功した。それは農民のラディカリズムの伝統のなかに息づく古くかつ新しい世界・生き方をみごとに伝えている。
目次
メノッキオ
村
最初の審問
「悪魔に憑かれている」?
コンコルディアからポルトグルアロへ
「高貴な身分の方々にあえて申し上げます」
古いものを残した社会
「かれらは貧しいものからむさぼり取る」
「ルター派」と再洗礼派
粉挽屋、絵師、道化〔ほか〕
著者等紹介
ギンズブルグ,カルロ[ギンズブルグ,カルロ][Ginzburg,Carlo]
歴史家。1939年イタリアのトリーノに生まれる。ピサ高等師範学校専修課程修了。長らくボローニャ大学で近世史講座の教授職にあったのち、現在はカリフォルニア大学ロスアンジェルス校で教えている
杉山光信[スギヤマミツノブ]
1945年東京に生まれる。東京大学文学部社会学科卒業。東京大学新聞研究所助手、大阪大学人間科学部助教授、東京大学新聞研究所教授を経て、現在明治大学文学部教授
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