出版社内容情報
世俗世界と天堂や地獄はどうつながっているのか。この上なく中世的なダンテの世界像を解明する試みが、この最初のダンテ論において第一歩を踏み出しつつある。詩人の想像力と『神曲』の構造を解明した処女作。
内容説明
詩人の想像力は何を幻視したのか?彼岸と此岸の相互関係を分析し、『神曲』に表現された独得の意味構造をみごとに把えた、クルツィウスと並ぶ、著名なロマニストによる記念すべき処女作。
目次
1 詩における人間の観念と運命に関する歴史的序論
2 ダンテの初期の詩
3 『神曲』の対象
4 『神曲』の構造
5 『神曲』の描写
6 ダンテの現実幻視の維持と変化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
8
全行数の真ん中の行の中央に「神」なる語を配し、三位一体を示唆する三行韻詩を地獄篇34、煉獄篇33、天獄篇33の100歌でまとめた『神曲』は、聖数3と完全数10を遵守し、時間を超越した神が睥睨するかの構成だ。だが著者は、1300年の聖金曜日に始まるこの作品にも、近代的人間を誕生させる世俗の要素を読む。現世と天国の間の煉獄なる観念が生まれる混乱した13世紀の世界観を取り入れ、地獄から垂直軸に沿ってボトムアップに進む『神曲』(La Divina Commedia)には、神聖さの中に人間の劇(喜劇)があるという。2020/02/10