出版社内容情報
最も現代的な病い=癌とエイズにまつわる多様な隠喩を分析・批判し、病いの記号論を展開する。
内容説明
西欧の文化=権力が病い=病者におしつけてきた不健康な表象を批判し、自らの癌体験をもとに病いそのものを直視した本書は、卓抜な〈病いの記号論〉であると同時に、1980年代にひそかに進行していた一つの知的活動を代表する成果。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アキ
58
「隠喩としての病い」「エイズとその隠喩」からなる。アリストテレスが「詩学」にて「隠喩(メタファ)とはあらゆるものに他の何かに属する名前をつけることである」と述べている。病気ほど隠喩に満ちたものはない。身体の病いとは健康と連続しておこる状態であり、切り離して考えられないものであるが、病気だけを取り上げて隠喩やイメージで語られることが多い。著者が乳癌を経験したことがきっかけでこの書が生まれた。前編では、結核と癌を、後編ではエイズにまつわる古典から文学作品、政治家の発言など縦横無尽に批評している。印象的(続く)2019/07/13
踊る猫
31
確かに「隠喩として」「病い」を語るのは危険である。病は病であり、目をそらさず、悪しき意味での文学的想像力に逃げず事実/ファクトを見つめてそこから理知的に類推を重ね「しなやかに」受け容れる態度が必要であろう。そんな「当たり前」のことがなかなかできないぼくとして、ソンタグのこのエッセイはいまだ有効性を備えていると見た。そして、ここからさまざまな現在の「病い」に議論をつなげることもできるのではないか。批判覚悟で書くけれど、発達障害という事象とソンタグのこの批評を接続したいという誘惑を感じる。無駄ではないはず、と2023/12/07
いやしの本棚
14
結核、癌、エイズの隠喩が、患者に「スティグマを押しつける」。自分もそういう隠喩を口にしてしまう事があるし、「それは複雑なものを単純化」し「自分は絶対に正しいとする思い込み」を誘うというのはその通りなので、気をつけたい。読みながら思っていたのは、そもそも、健康であることはとてもいいことで、病気は戦ってやっつけなくちゃならないものっていう、その考え方に違和感あるんだよな~っていうこと。病や死は、怖い。でもどうして怖いんだろう。「隠喩」もその怖さに関わっていると思う。2016/10/10
borug
1
芸術の衰退を結核の減少に見ようとした批評家がいたのか、、2015/01/14
抹茶ケーキ
0
病は文学や通念においてどのような意味を担わされてきたか。基本的には癌と結核とエイズを取り上げてそれぞれの隠喩を分析。もともと癌に与えられていた自業自得のニュアンスがエイズに移行したとかなんとか。病は道徳性を付与されること、戦争のメタファーが使われることとかが面白かった。2015/12/20