出版社内容情報
真の日本の伝統とは何だったのか。『日本の伝統』全文に『日本再発見』から出雲・岩手他を収録。
青年期、パリで画業の他に文化人類学を学んだ岡本太郎の眼差しは、前衛活動の傍ら、日本の真姿を求めて止まなかった。 縄文土器に出会った岡本には、官製伝統論と大きく違ったもう一つの伝統が見え始めた。日本再発見、仏像にせもの論他。
内容説明
従来の「日本の伝統」に根本的な疑問を抱かざるを得なかった岡本太郎は、おのれ自身の目で、日本を確かめようとする。逃れようもなき日本人として、ソルボンヌで鍛えた方法論をもって、また創作家・岡本太郎の眼差しで日本を見つめ直そうとする。形骸と化した日本の伝統にしがみつくのではなく、我々自身の血となり肉となるものとしての伝統でなければならない。縄文土器、奈良・京都の庭園、光琳の凄み、仏像、面…。岡本太郎の前には、サビ・シブミを超えて、骨太な日本の姿が現れてくる。
目次
日本の伝統(伝統とは創造である;縄文文化―民族の生命力;光琳―非情の伝統;中世の庭―矛盾の技術;伝統論の新しい展開―無限の過去と局限された現在)
日本再発見―「芸術風土記」より
孤独者と単独者
仏教にせもの論
面
雪舟
生活者のイメージ―琳派の自然
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あっきー
6
✴3 積読本消化月間22冊目、日本文化論なのだがその通りだなーと思うところもあれば、そうでもないところもあり、とにかく自分も銀閣寺や禅寺の庭など紹介されているところに行って直に見たいと思った、慈光院だけは7年程前に行ったので記憶にあり興味深く読めたのが良かった2016/12/11
roughfractus02
5
『日本の伝統』と『日本再発見』の一部を併せて収めた本書では、著者が前衛の立場から単に伝統を批判するのではなく、新たな伝統の創造を試みていたことがわかる構成だ。伝統概念が近代に作られた官製トップダウンの急拵えだと批判する著者は、一方で、伝統を過去として排除すれば同じ歴史時間上に自らを加えるだけになることにも批判の目を向けた。著者は、現存するモノを集めて作った近代の伝統作品の中に呪術的痕跡を見出し、儀式や建築空間に歴史を作る文字や物に現れない瞬間瞬間の生の痕跡を追求する。本書では著者の思想の概要が一望できる。2023/04/26
メルセ・ひすい
1
縄文式土器・・狩猟民族時の大和・躍進・闘争、動的であり、惨たらしいほどの積極性闘争する民族のアヴァンチュール衝撃を感じさせるシンメトリーそれは破調であり、ダイナミズム、その表情は常に限界を突き破って躍動する。見る者はどうしても土器の周囲を回って見なければすまない衝動を感じ始める。・・・いったいこのような反美学的な、無意味な、しかも見る者の心情を根底からすくいあげひっくり返すとてつもない美学が、世界の美術史を通じて見られるでしょうか。超自然的な力と均衡なのだ・・ 大きな伝統の感動であると信じます。 2008/01/08
chanvesa
0
岡本さんにとったら日本というワクは狭いのではないか。所収のエッセイでは縄文式土器の荒々しさと銀閣寺の銀沙灘の宇宙的な魅力に触れている箇所くらいが圧倒的だ。後は挑発こそすれ(「法隆寺は焼けてけっこう」「仏像にせもの論」)鼓舞してくれない。『呪術誕生』の迫力が圧倒的である。2012/03/17
メルセ・ひすい
0
★モーレツに素人たれ ・誤解しないでほしい。私はけっして炯眼・ケイガンなのじゃない。また芸術家だから訓練があり、発見できるんじゃありません。! 無邪気に、素直に見れば、だれにだってはっきりしていることなのです。なぜ、ふつうの人には見えないのか。素人でいて素人じゃないからです。妙にかまえて、玄人的な見かたをしてしまう。そして伝統なんて問題にしない、はだかの目の正しさをみずからふさいでしまうのです。素人ほどほんとうの批評眼をもっているはずです。・・イワク因縁、故事来歴。・・それに引っかかり本質にふれなくなる2007/10/01