青年ルター〈2〉

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  • サイズ B6判/ページ数 430,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784622039730
  • NDC分類 198.385
  • Cコード C1011

出版社内容情報

アウグスティヌス修道院に入ったマルチンにとって、修道生活は人生の決定的な決断を延期させるモラトリアムの役割を果たした。

孤独と匿名性のなかにしばしの安らぎを得たマルチンだったが、神に至る道を感じることができず、やがて神を「信頼できない恐ろしい父」とみなすことによって罪を背負ったという自覚は、激しい混乱をもたらした。その彼がふたたび「神は義である」という認識に至りつくプロセス――著者はそれを、制度的宗教が世界観=価値観を支配していた時代の文脈と、マルチンの内に展開する心理的発展の過程の内に読み解いてゆく。

信仰と意志、宗教と律法との新たな境界設定をめざして、独自の神学体系を組み立てていったルターの〈引き延ばされたアイデンティティ危機〉の解決、さらに、宗教改革という反乱を起こした数年後、嵐の後の静けさの中で彼を再び襲った中年期の危機にいたる歩みの内に、ルターの愛の能力の大きさ、そして回復力の大きさを見る。

全2巻・完結。


Erik H. Erikson(E.H.エリクソン)
1902年ドイツに生まれる。精神分析家・思想者。アンナ・フロイトに教育分析を受け、ウィーン精神分析研究所で児童の分析に従事。1933年渡米、ボストンで児童分析医を開業しつつ、M・ミード、G・ベイトソン、R・ベネディクトなどと交流をもった。1938年スー族の幼児教育を調査し、人間の成長と文化的・社会的環境との関係を理論づけた。1939年サンフランシスコに移り、カリフォルニア大学児童福祉研究所で研究を継続、1946-50年にかけ『幼児期と社会 1・2』(みすず書房、1977、1980))を著わし、彼の発達理論の基礎をなすエピジェニシスの原理を明確にした。マッカーシー旋風のとき忠誠宣言を拒否し、カリフォルニア大学を去り、1950-60年、オースチン・リッグズ・センターの主任医師として活躍した。1958年、本書『青年ルター』によって心理=歴史的研究方法を試みた。1960-70年ハーヴァード大学で人間発達講座の教授。その後シカゴのロヨラ大学エリクソン幼児教育研究所顧問。1994年歿。主著はほかに『洞察と責任』(1964、誠信書房、1971)、『アイデンティティ――青年と危機』(1968、金沢文庫、1973)、『ガンディーの真理』(1969、 みすず書房、1973-74)、『歴史のなかのアイデンティティ』(1974、みすず書房、1979)、『ライフサイクル、その完結』(1982、みすず書房、1989)、『老年期』(1986、みすず書房、1990)などがある。

西平 直(にしひら・ただし)
1957年、甲府市生まれ。信州大学卒。東京都立大学大学院を経て、東京大学大学院博士課程修了。現在 東京大学教育学研究科助教授。著書『エリクソンの人間学』(東京大学出版会、1993年)、『魂のライフサイクル』(東京大学出版会、1997年)、『魂のアイデンティティ 』(金子書房、1998年)、『シュタイナー入門』(講談社現代新書、1999年)、共編『宗教心理の探究』(東京大学出版会、2001年)。共監訳『エリクソンの人生』(新曜社、2003年)。
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関連書:
E・H・エリクソン『青年ルター』1
E・H・エリクソン『幼児期と社会』1・2
E・H・エリクソン『ガンディーの真理』1・2
E・H・エリクソン『ライフサイクル、その完結 増補版』

内容説明

若き偉人であると同時に後に大規模な破壊者となる病める青年。マルチン・ルターの葛藤と危機を、歴史・宗教・精神分析・ライフサイクル研究の諸相から読む。

目次

第5章 最初のミサと行き詰まり―修道院の生活とその葛藤(修道士マルチン;病める青年―偉大な人物の大きな葛藤 ほか)
第6章 「本気になること」の意味―中世キリスト教界とルター神学(ローマへの旅行―マルチンにとってのルネサンス;中世の思想状況―いくつかの世界観=価値観 ほか)
第7章 信仰と怒り―宗教改革とその後の精神的危機(宗教改革と農民戦争;鬱・尻・悪魔)
第8章 エピローグ―理論的整理(ルターとフロイトの対比;ライフサイクルにおける危機 ほか)

著者等紹介

エリクソン,E.H.[エリクソン,E.H.][Erikson,Erik H.]
1902年ドイツに生まれる。精神分析家・思想家。アンナ・フロイトに教育分析を受け、ウィーン精神分析研究所で児童の分析に従事。1933年渡米、ボストンで児童分析医を開業しつつ、M・ミード、G・ベイトソン、R・ベネディクトなどと交流をもった。1938年スー族の幼児教育を調査し、人間の成長と文化的・社会的環境との関係を理論づけた。1939年サンフランシスコに移り、カリフォルニア大学児童福祉研究所で研究を継続、1946‐50年にかけ『幼児期と社会』1、2(みすず書房1977、1980)を著わし、彼の発達理論の基礎をなすエピジェニシスの原理を明確にした。マッカーシー旋風のとき忠誠宣言を拒否し、カリフォルニア大学を去り、1950‐60年、オースチン・リッグズ・センターの主任医師として活躍した。1958年本書、『青年ルター』によって心理=歴史的研究方法を試みた。1960‐70年ハーヴァード大学で人間発達講座の教授。その後シカゴのロヨラ大学エリクソン幼児教育研究所顧問。1994年没

西平直[ニシヒラタダシ]
1957年、甲府市生まれ。信州大学卒。東京都立大学大学院を経て、東京大学大学院博士課程修了。現在、東京大学教育学研究科助教授
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

さえきかずひこ

10
本書はひとりの人間としてのルターの葛藤に満ちた青年後期〜中年期の歩みを、アイデンティティ危機という心理学的観点から分析してゆく(ちなみに彼は1546年に63歳で死去している)。結論部の第8章を読んでいて、あまりにもフロイト主義的で首をかしげる部分もあるにはあったが、基本的に精神分析の立場から、ルターの実存の問題に肉迫していく内容なので、仕方がない。ただ、ルターと父ハンスの関係と、ルターと父なる神の関係がパラレルに、またある時は重ねられて叙述されるのにはやや辟易し時に白けてしまった。翻訳は良くて読みやすい。2018/05/23

roughfractus02

7
実生活と宗教生活で、「子」としての青年期の危機を、ルターは実父の願いを受け入れて結婚し、子の「父」となることで一部解消したと本書はいう。その後、95箇条の提題を教会に突きつける改革指導者となるルターだが、プロテスタント革命は教会国家の功利的な資本主義体制に与し、彼を「父」世代の弁護人に変える(生殖性の危機)。アイデンティティーとイデオロギーの関係が危機を生む場面を検討する本書は、マッカーシズム吹き荒れるイデオロギー状況で、自ら用いた「アイデンティティ」なる語の反響に困惑する著者自身が重なるようにも見える。2021/11/16

とある聖職志願者。

4
精神分析のエリクソンによるルター伝。 レジリエンスの関連で読み始めたのですが、修道院生活の方に関心が行ってしまいました!ローマに対する改革をするようなルターですから、さぞレジリエントな人物だったのだろうと思いましたが、痙攣発作があったり、宗教的な葛藤があったようです。2016/12/29

てれまこし

3
ルターを一人の煩悶青年として見ることにより、歴史上の煩悶青年の位置が明らかになる。実存問題とは世界は自分なしでも存在しえるという衝撃的事実の認識である。大人は目的論的に過去を語り直すことによってこの問いを封印する。まだ語るべき仕事をしていない青年だけが実存問題に執りつかれる。しかし、大人は青年に向き合うことによって、自らが封印した実存問題を再吟味する機会を提供される。社会の新陳代謝はこの世代間の対立によって生じる。問題は、大人は自らの世界との和解を危機にさらさずには、青年と向き合うことができないということ2019/09/13

ぼけみあん@ARIA6人娘さんが好き

3
前から読みたいと思っていた本。やっと読めた。近所の大学図書館に1巻のみあって、市立図書館に1~2巻をリクエストして読了。思ったより早く来たので大変だったけど、じっくり読んでコピーもいっぱいとった。一方的にルターを権威主義的性格とするフロムの分析と違い、芸術家など偉大な青年がアイデンティティ危機をどう乗り越え、かつ問題を抱えてしまったかを、ルターの青年期を中心に丁寧に分析してゆく。エリクソンの理論はよく知らないので理解し切れていないとは思うが、読んでよかった。場合によっては再読したい。2014/01/28

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