過程と実在〈1〉コスモロジーへの試論

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  • サイズ A5判/ページ数 xxvi/高さ 22cm
  • 商品コード 9784622017608
  • NDC分類 133.5
  • Cコード C3010

内容説明

ホワイトヘッドはわれわれの時代の最も偉大な哲学者の一人であり、彼の哲学を体系的に叙述した主著『過程と実在』は最も傑れた哲学書の一冊である。しかし、この書が1929年に刊行されたとき、それは多くの印刷上の誤り、英国版とアメリカ版との齟齬を含む悲しむべき状態にあった。従ってホワイトヘッドの『過程と実在』に比べれば、プラトンの『国家』の方がより良いテクストで読みうるとさえ言われる。それから半世紀、グリフィンとシャーバーンによるこれ以上は望みえない校訂版が公刊された。本書はこの決定版に依拠する最新訳である。その重要性において、その難解なまでの言語の駆使において、ジョイスの『フィネガンス・ウェイク』にも比せられるこの講義で、ホワイトヘッドは自ら“有機体の哲学”と名づける哲学の体系を構築する。そこでは17‐18世紀の哲学者―デカルト、ニュートン、ロック、ヒューム、カント―を検証しつつ、無限の宇宙を有限な言語的表現で把握すること、宇宙論的観念を人間の多様な経験と結びつけることが意図されている。ここにわれわれは確かに、われらのコスモスに対する新しい解明、新しい光を受けとるであろう。

目次

第1部 思弁的図式(思弁哲学;範疇的図式;若干の派生的概念)
第2部 議論と適用(事実と形相;延長的連続体;自然の秩序;有機体と環境;ロックとヒューム;デカルトからカントへ;主観主義原理;象徴的指示;命題;過程)

著者等紹介

ホワイトヘッド,アルフレッド・ノース[ホワイトヘッド,アルフレッドノース][Whitehead,Alfred North]
1861‐1947。1861年2月15日イングランドのラムズゲイトに生れる。1880年ケンブリッジ大学トリニティ・コレジに入学、数学を学び、1885年より同コレジのフェロー。1890年イーヴリン・ウェイドと結婚(のち2男1女をもうける)。1913年英国数学会会長。1911‐24年ロンドン大学で応用数学を講ず。1924年秋よりハーヴァード大学哲学科教授。1938年同大学名誉教授。1945年オーダー・オブ・メリット勲位を受ける。1947年12月30日マサチューセッツ州ケンブリッジにて没す

平林康之[ヒラバヤシヤスユキ]
1926年東京に生れる。1948年東京大学文学部卒業。1973年より名古屋大学教授、1988年より名古屋大学名誉教授、愛知工業大学教授。2006年6月22日没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

34

18
「一つの現実的存在[actual entity]の生成において、選言的な多様性における多くの存在の可能な統一――現実的ないし非現実的な――は、一つの現実的存在の実在的な real な統一を獲得するということ。それ故、現実的存在は多くの可能的なものの実在的な合成なのである。」こうした独断的な表現が、最初の方法論について述べた章のすぐあとに出てくるので面喰らってしまうが、ある程度読んだあとで読み返すと実はとてもスリムな図式。上に引いた箇所からもわかるように、ドゥルーズなどはめちゃくちゃ影響を受けてそうな哲学。2017/04/05

Bartleby

13
三読め。あいかわらず難しいけど嬉しくなる。あまりに抽象的だからかえっていろいろ思い当たることがあり、一周の自己啓発書としても読んでいる。本書にかぎらずホワイトヘッドの本を読んでいるといつも植物を連想する。近頃、植物の哲学とか、植物の権利を認めようといった主旨の本をちらほら見かけるけど、ホワイトヘッドをその文脈で読んでも面白いかもしれない。ホワイトヘッドの主体概念は植物っぽい。物理学の文脈から書いた論文もあれば読んでみたい。仏教と合わせて論じた論文はたくさんありそう。2023/05/10

roughfractus02

5
自らの形式化を進める純粋数学とそれを基礎に展開する科学が生きた次元から乖離した前世期初頭、その中心にいながらその抽象化によって具体的現実は置換可能と思い上がる諸科学に危機を感じた数学者の著者は、具体性の形而上学の構築を試みる。とはいえ著者の具体性概念は、我々の生きる現実であっても従来の具体性とは違う。具体的なのは「過程」即「実在」であり、この具体性は、彼によって「現実的実質」(actual entity)と呼ばれる。この『実質」を契機として有機的に構成する宇宙では全てが出来事となり、静止も運動となる。2017/02/16

wadaya

3
ホワイトヘッドの哲学は「有機体の哲学」と言われる。有機体とは無数の組織が絡み合う総合体のようなものである。ドゥルーズがホワイトヘッドに影響を受けたかどうか知らないが、その有機体を構成する定点を微分して最後の1ピクセルの傾き(強度)として表現している。ホワイトヘッドは、そこには定点ではなく「過程」しかないと言う。過程と過程の関わり合いを有機体と表現した。それは動き続け、その度に新たなものに触れ差異を生み出し続ける。しかし我々が認知できるのは、その差異のほんの一部に過ぎない。この時点でデカルトの不足を示した。2019/07/21

鴨長石

0
本書が数多の哲学・自然科学を総括するような凄まじい大著であることは直感でわかる。が、悔しいことに読み解けたとは全く言えない。他の人の感想や解説なども併せてかろうじて感じ取れた、各々の「現実的存在」が「包握」を通じて網目のように関わり合うその「過程」こそが「実在」であるということ、この着想に今はただただ圧倒されつつ、本書を読み倒すことをライフワークにすることを決意する。2020/09/13

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