感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松本直哉
18
たとえば不協和音の方が前衛的と言われるが、むしろ不協和音の方が原初的で、未だに秩序原理によって滑らかにされていない音なのかもしれない。その第2弦楽四重奏曲を聴いて強く心動かされたカンディンスキーがシェーンベルクに手紙を書いたことから始まった2人の敬意と友情あふれる往復書簡から、2人が共通して追い求めていたのが、構成の背後にある原初的で無意識的な非論理の「魂」に属するものだったとわかる。画家の具象から抽象への飛躍も、作曲家の無調への傾きも、内的必然性に基づく真摯な挑戦だった。2016/09/04