感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しお
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本書は構造主義運動と5月革命という二つの運動の間に位置する。文学もその潮流の影響を相応に受けるわけだが、文学固有の空間、または現実を即自的な仕方とは別様に基礎付けてきた文学の蓄積を覆すものではない。とはいえ、日常の言語表象が小説を基礎付けるとみなす心理主義もナドーの認めるところではない。手段でなく目的としての言語ないしイメージが、伝達を適切な水準で確立させ、その持続的な芸術として実現される小説の胎動(記述と読解)こそが、我々自身が読むことにおいて我々に科された事実性を再認する行為の絶えざる契機なのである。2020/10/12