出版社内容情報
本書は、ドキュメンテーション研究における初の包括的入門書である。
歴史的背景と理論的基盤を整理し、学術研究のみならず社会各領域の実践に適用可能な補完的アプローチを提示する。
作曲家、作家、画家、歴史家、政治活動家、福祉機関――これらはいずれも、世界と交わるためにドキュメントを生み出す。本書は、この6つの事例研究を通じ、ドキュメンテーション、コミュニケーション、インフォメーションの絡み合う過程を分析し、主体・手段・成果の関係を明らかにする。
この分析モデルは、人文・社会科学から自然科学・工学・デザインに至る諸分野に有効である。
原著者はドキュメンテーション研究の第一人者であり、アーカイブ・図書館・博物館の専門家はもとより、医療・交通・教育・生産・流通において文書を扱う実務家にとっても必携の理論的枠組みを提供する。
「2025年T 最優秀情報学図書賞 受賞」
【目次】
序文(デビッド・ボーデン & リン・ロビンソン)
はしがき/謝辞
■はじめに
人間生活におけるドキュメンテーション:人生初のドキュメントとしての産声 / ドキュメンテーション研究:学問分野 / ドキュメンテーション:専門職 / 本書について
【第1部 ドキュメンテーションの理論】
■第1章 舞台の仕込み
はじめに / ドキュメンテーション / コミュニケーション / 情報(インフォメーション) / ドキュメンテーションの観点の再興 / まとめ
■第2章 ドキュメンテーションの相補的理論
はじめに / 「秩序が壊れゆく時」の一般理論 / サブシステムの世界 / 人間実践(ヒューマンプラクティス) / ドキュメンテーションの秩序、コミュニケーションの秩序、情報の秩序 / Doce? + mentum:ドキュメンテーションのプロセス / 相補的なプロセスの構成要素 / ドキュメンテーション ? 再ドキュメンテーション / ドキュメントをとらえる3つのレベル / まとめ
■第3章 相補的なドキュメンテーション分析のためのモデル
はじめに / ドキュメンテーションの通時的分析 / ドキュメントの共時的分析 / ドキュメンテーションの比較分析 / 実験的な分析 / まとめ
【第2部 ドキュメンテーションの実際】
■第4章 音楽:フォン・ヴァルゼック伯爵夫人のためのレクイエム(別名モーツァルトの《レクイエム》)
はじめに / レクエイムとは何か / 伯爵夫人のためのレクイエム / モーツァルトの《レクイエム》:ラディカルな破壊-新たな支配秩序:クラシック音楽 / 「作品」:自筆譜 ? 筆写譜 ? 版 ? 演奏 / 録音 / モーツァルトの《レクイエム》「について」 / まとめ
■第5章 文学:「インディアンキャンプ」―アーネスト・ヘミングウェイの短編小説
はじめに / 「インディアンキャンプ」は短編小説として立ち現れる(1923~1925年):通時的なドキュメンテーション分析 / 「インディアンキャンプ」:共時的なドキュメント分析 / 「インディアンキャンプ」と「ヘミングウェイ」に関するドキュメント群 / 「ヘミングウェイ」について / まとめ
■第6章 芸術:「橋の上の少女たち」―ひとつのタイトル、多数の作品
はじめに / 視覚芸術世界のサブシステムにおける相補的状況 / エドヴァルド・ムンク:略伝 / 「橋の上の少女たち」:複合体の分析 / まとめ
■第7章 科学:「デンマーク革命 1500~1800年」―博士学位論文
はじめに / 科学:サブシステム / Doctor of Philosophy / 「デンマーク革命」:博士学位論文 / 手段と様式 / ドキュメントとdocemes / 博士論文公聴会:口頭のドキュメント / 「デンマー