内容説明
暗雲漂う時代。小さな山小屋の庭で―四季折々の光と影、生の哀歓、自然の連関から滴り落ちる言葉が、新たな“人の道”を切り拓く。深く五感に響き渡る文章世界。
目次
第1章 二〇二〇年六月‐九月(個性は消えない;バランスを視ること;うつくしい保険)
第2章 二〇二一年四月‐八月(鉄人の日々;群れにいると見えないこと;半返し縫いの日々;アマチュアの心)
第3章 二〇二一年九月‐十二月(長い間、気づかずにいたこと;自然界では一つとして同じ存在はないということ;森の道 人の道)
第4章 二〇二二年一月‐四月(晩秋と初冬の間;敗者の明日;準備はできつつある;雪が融け 水が温み)
第5章 二〇二二年五月‐九月(失ったものと得たもの;滴るように伝わる;目的は、「変化」そのもの、なのか)
第6章 二〇二二年十月‐二〇二三年三月(歌わないキビタキ;秋はかなしき;あるべきようは)
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心と頭に栄養補給する本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
207
梨木 香歩、2作目です。春夏秋冬花鳥風月エッセイ、著者の巧みな文章により美しい情景が浮かび上がります。 https://mainichibooks.com/books/essay/post-641.html 2023/11/16
KAZOO
118
梨木さんのエッセイ集です。毎日新聞やサンデー毎日に掲載されていたものをまとめられたようです。八ヶ岳の山荘での日々の感じられたことが綴られていて、私は武田百合子さんの「富士日記」を思い出したりしながら読んでいました。野鳥や植物についての観察日記のような感じもします。うらやましいような生活ぶりです。このような環境で生活していると都会のあわただしさを忘れさせてくれて思索にはいいと思います。2023/11/13
のぶ
107
充実した内容のエッセイで読んでいて楽しかった。梨木さんの文章は自然描写の中に社会的な問題を、さりげなく取り入れていて自然の素晴らしさだけではなく、時事的な話題についても警鐘を鳴らしている事にいつの間にか気づかされる。コロナ流行への用心もあったし、ロシアのウクライナへの軍事侵攻についても無関心ではいられない。そして、安倍元首相の狙撃事件。梨木さんの一言は、ちょっと注目だった。そんな話題と八ヶ岳の山荘を訪れる小鳥や小動物については、相容れぬはずなのに読まされてしまう。梨木さんの文章力に感嘆した。2023/10/28
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
101
(2023-124)【図書館本】都会を離れ足繁く通う八ヶ岳山麓の山小屋での日々を綴ったエッセイ。テラスに作った餌場にやってくるコガラやシジュウカラ達。庭に咲くホトケノザ、ヒトリシズカ、ノゲシ、ヤマオダマキ。カネタタキやコオロギの虫の音など。豊かな自然に囲まれた生活には憧れる。ただそうした話題ばかりでなく、認知症の母親の介護やご自分の病の話などもあり、世代がそう離れていないだけに色々と思いながら読みました。「寒い日に備えて、心の炉辺に小さな熾火を絶やさぬように」印象に残った文章でした。 ★★★+2023/10/17
nico🐬波待ち中
80
久しぶりの梨木さんのエッセイは認知症の話が特に印象に残った。高齢の親を持つ身としては胸の痛む箇所がたくさん。「私が私でなくなる」梨木さんのご友人が涙をポロポロ流しながら言われる言葉に胸がギュッと締め付けられた。つい母親と重ねてしまう。「たとえ倫理的に考え抜く力をなくしても、動けなくなっても、私たちには幸福で満たされる可能性がある。さまざまな『感じ方』を楽しむ術を、身体の各所が持っている」梨木さんのように割り切って考えられれば良いのだけれど。私も梨木さんの域に達するにはまだまだ人生における修行が必要だな。2024/01/20