出版社内容情報
一人の青年の出現で揺らぎはじめる夫婦の日常。直木賞作家が描いた定年後の誤算。
「第35回織田作之助賞」受賞作品、待望の文庫化!
内容説明
定年後の日々を、趣味のクロスバイクを楽しみながら穏やかに過ごす昌平とゆり子。ある日、昌平が転倒事故を起こし、一人の青年・一樹が家事手伝いとして夫婦の家に通い始める。彼の出現を頼もしく思っていた二人だったが、やがてゆり子が家の中の異変に気づき…。著者の新境地となった第35回織田作之助賞受賞作。
著者等紹介
井上荒野[イノウエアレノ]
1961年、東京都生まれ。成蹊大学文学部卒業。1989年「わたしのヌレエフ」でフェミナ賞を受賞し、デビュー。2004年『潤一』で島清恋愛文学賞、2008年『切羽へ』で直木賞、2011年『そこへ行くな』で中央公論文芸賞、2016年『赤へ』で柴田錬三郎賞、2018年『その話は今日はやめておきましょう』で織田作之助賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
505
年代は違うが、我が両親に昌平とゆり子の姿を重ね合わせてしまい、なかなかに辛い読書だった。人は誰もが老いていく、それはすなわち衰えていく、いろいろなことが出来なくなる、ということ。出来なくなれば、他人に頼らざるを得ない、ということなのだ。平易かつなめらかな文章で、先が気になり一気読み。思えば久しぶりの荒野さんだった。2022/08/07
相田うえお
84
★★★☆☆21119【その話は今日はやめておきましょう (井上 荒野さん)】昌平(七十二歳)と妻ゆり子(六十九歳)はクロスバイクを購入して一緒にサイクリングを始めた矢先、夫の昌平は事故に遭遇して足を骨折し、リハビリ生活となってしまいます。そんなとき、ある若者と知り合い、家事手伝いのアルバイトを頼む事に...ところが!と、流れます。この作品、やっと自由な時間を得た老夫婦の悠々自適な生き方を描いたものだと思いきや、非常にフラストレーションがたまる話で思わず眉間に皺がよる場面も。心がざわざわ〜でも良かった。2021/12/14
けいこ
46
クロスバイクを趣味とする70代と60代の夫婦。そこに、ひょんなことから1人の若者が関わるのだが、、。いつもの井上荒野さんらしく無い、どこにでもいる夫婦と青年の話は、ごく普通だからこそあり得る心の内が逆に怖い。言いたいのに言い出せない、自分の中だけで処理してしまおう、気のせいだ、無かったことにすればいい。誰もが抱えた事のある感情が登場人物たちそれぞれの間で渦巻くが、ラストにかけて一気にモヤモヤしたものが晴れ、スッキリとした読後感。読む手が止まらず一気読みでした。それにしてもなんて秀逸なタイトルなんだろう。2022/03/21
たぬ
41
☆4 老夫婦がカモられている事実に徐々に気づいていくものの、それを素直に認められないさまが臨場感あった。いくら「いい子」だとしても身分のはっきりしていない人物を自宅にあげるのはナシよね。一方で一樹の目の前のジジイを殴りたい衝動もなんとなく理解できる。最終局面での一樹の引き際が思いの外あっさりしていてホッとするやら物足りないやら。2022/09/12
ほう
30
恵まれた老後を送っている夫婦にアクシデントが起こり始め、出来なくなった事を補って貰う為に、サイクルショップで知り合った青年に手伝って貰うことになった。「何と無防備な!」と思ってしまった。彼が只の善人であれば、この小説は成り立たないと思うけれど、私としては少し違和感の残る作品だった。2022/12/21