内容説明
自らの信念を曲げた劉邦の真意とは?秦王の降伏を受け、劉邦は秦の都・咸陽に入る。しかし、項羽によって劉邦は巴、蜀、漢中の王として左遷されることに。項羽と天下を争うことを決意した劉邦は、関中へ兵を挙げる!宮城谷昌光作家生活25周年記念作品。
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、愛知県蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。平成3年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞した。続いて5年『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、12年には司馬遼太郎賞、13年『子産』で吉川英治文学賞、16年菊池寛賞を受賞。18年紫綬褒章を受章。日本の歴史に題材をとった作品もある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
225
宮城谷昌光が描く『項羽と劉邦』の世界。 個の項羽と集の劉邦を どう描くのか、興味が あったが、劉邦視点のこの 本、やはり項羽の存在感が ゆるく物足りない。 だが、鴻門の会から、垓下の戦い…張良、韓信が活躍する 様は面白く、項羽と劉邦の 死闘と斉を制した韓信の 立ち位置は、改めて読むと 興味深い。 虐殺の限りを尽くした 項羽の末路ははかなく、 読むたびに漢文の授業を 思い出すのがなぜか 可笑しい、そんな巻だった。2015/11/22
hiro
111
劉邦が項羽を破り、前漢の初代皇帝になるまでの下巻。この本を読むまでは、四面楚歌、虞美人で項羽の印象が強かったが、『劉邦』全三巻を読んで、劉邦の人となりを知ることができた。しかし、読み終えて何か物足りなさを感じるのも事実。たとえば、自分のなかの信長、秀吉、家康のイメージは、小説を読んり、映像作品を観ることによって、かたちづくってきたように、項羽と劉邦についても、司馬遼太郎の小説や横山光輝の漫画を読んで、もう少しイメージをはっきりしてみようと思う。ただ、これが紀元前200年以前の話ということに驚く。2015/09/26
巨峰
72
著者の既刊に比べると駆け足になることなく楚漢戦争の最後まできっちり書かれているなと思いました。ただ、よく知られている歴史だけにフィクションを挟める余地は少なかったのかも知れない。 紀信や周苛を惨殺されて哭く劉邦の姿が印象に残りました。司馬さんの「項羽と劉邦」を上書きして保存するほどの作ではないけど、名前を付けて並べて起きたい作品ではあります。2015/07/15
キジネコ
44
感情移入できず淡々と読み進め最後の最後に滅びの道を行く項羽に気持ちの重心が移りました。正邪善悪でもなく、大小強弱でもなく、勝敗優劣でもない・・殺す項羽の未熟と生かす劉邦の巧緻、追う楚と逃げる漢、その都度の戦の得失の綾織を対比させ序盤に示した美醜の立ち居地を逆転させ物語りは終ります。帝位の劉邦が猜疑の闇の中で尽きる稀有なる生涯に何を思ったか、敗北を知らず戦い続け28人の従騎と先立った虞姫のあとを追い自死する項羽の胸に去来したものは何であったのか。「疑うものは、弱いか・・」と劉邦に独語させた作家の意図を思う。2015/11/02
123
37
上・中・下巻。読みきった!今まで、深く理解していなかった項羽と劉邦の時代。全体の流れをよく把握することが出来た。どうように劉邦が漢王朝を設立したのかが気になり、本下巻を一気読みしてしまった。ただ、前述の通り、この時代の初心者である自分が歴史を俯瞰するうえでは非常に秀作だったと思うが、物語としては淡々とした印象。文量の制約はあるとは思うが、魅力ある登場人物達の活躍をもっと感情移入できるように描いてもらえるともっと良かったかなと思う。あと、項羽が三國志時代の呂布に思えて仕方がない。2015/08/28