内容説明
秦末、王朝を覆す「天子の気」を遠望した始皇帝は、その気を放つ者を殺すように命じる。配下に襲われた泗水亭長・劉邦は、九死に一生を得る。始皇帝の死後、陵墓建設のため、劉邦は百人の人夫を連れて関中に向かうことを命じられるが…。三国志より遡ること約400年、宿敵・項羽との歴史に残る大合戦を制した男の全く新しい人間像を描き出す、傑作長編小説の誕生!
著者等紹介
宮城谷昌光[ミヤギタニマサミツ]
昭和20(1945)年、愛知県蒲郡市に生まれる。早稲田大学文学部卒業。出版社勤務のかたわら立原正秋に師事し、創作を始める。平成3年『天空の舟』で新田次郎文学賞、『夏姫春秋』で直木賞を受賞した。続いて5年『重耳』で芸術選奨文部大臣賞、12年には司馬遼太郎賞、13年『子産』で吉川英治文学賞、16年菊池寛賞を受賞。18年紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
211
宮城谷昌光が描く「劉邦」 の世界。秦朝末期、始皇帝 が恐れる「天子の気」を 持つ者… まるで韓国歴史ドラマの ような始まりから、劉邦の 物語は始まる。その後の 英雄たちが、少しずつ 登場するのも上巻の 醍醐味。 項羽がまだ出て来ないのが 寂しいが、中巻以降の お楽しみ。2015/08/23
hiro
88
中国の歴史上の人物の本を読もうと思い、まずは項羽と劉邦だと思ってこの本を読むことにした。ただこの本は前漢初代皇帝となる劉邦を描いており、この上巻では劉邦が40台後半、泗水亭の長の時代から始まる。劉邦の配下をまとめ、的確に動かし、時には部下をかばう人格的な容量が大きく、人使いの名人劉邦の元には人が集まる。そして秦の始皇帝の死後混乱の中、ついに劉邦は兵をあげる。まだこの上巻では項羽の姿はまったく見えないが、劉邦についてはじっくり見ることができた。劉邦はどのように皇帝まで駆け上っていくのか、次巻以降が楽しみだ。2015/09/02
巨峰
69
同じ宮城谷さんの「長城のかげ」は、周りの人からみた劉邦を綴った、ちょっと溜め息がでるほどの名篇でした。そしてついに今回は長編の主人公。期待を込めてよみはじめました。この巻では呂雉の毅さと、劉邦の神がかり的な物事の認識力が印象にのこりました。ちなみに人物を描くときその父や祖父の代から描くことが多い作者ですが、流石に庶民階級の出でどこかの馬の骨の劉邦にはその手は無理だったようです。2015/05/27
姉勤
48
同著者、同時代を描いた「香乱記」では、苦もなく天下を盗み取った男の様に描かれていた劉邦。 当時の寿命からすれば盛りの過ぎた、47歳のさして生業に励む事もない男として登場する。亭長として一目置かれるものの、無頼の半生が、自他共に実より軽く見積もられていたが、始皇帝が滅するころを境に、天性の勘とマネージメント能力が発揮され、人びとの才と人脈を手繰り寄せ、「劉邦組」と言える様な集団が故郷の沛に組織され、天下に旗を揚げた。楚漢戦争という時代の激流に、人がどう「化ける」か見もの。2015/10/19
シュラフ
35
人間をタイプ別に仕事的に分類すれば、「指導者」と「専門家」と「その他」に分かれる。この劉邦こそは、典型的な指導者タイプ。では、劉邦の指導力とは、なにか。この本の読み方として、そのヒントを見つけるために、読んでみるのみいいだろう。要約的にまとめてみれば、「命がけで信義を実践しようとする志をもっており、物事には現実的に対応して、他人をよく見極める」ということだろう。巨大工事のための人夫に脱走されて窮地に陥った劉邦であるが、部下たちを引き連れて隠れる。だが風雲急を告げる天下の情勢は劉邦を放っておかない。2017/04/09