内容説明
1947年、戦時中に行方不明になったいとこを探すシャーリーは、ロンドンの薄汚れた住宅を訪ねる。現れたのは酔いどれの中年女。潰れた指で拳銃を振り回すその女、イヴは元スパイだった―。第一次大戦中、若きイヴは無垢な容姿と度胸を買われ、ドイツ占領下のフランス北部へ潜入する。そこでは凄腕のスパイ“アリス”が無数の情報源を統括していた。語られる壮絶な真実とは?実話に基づく傑作歴史ミステリー。
著者等紹介
クイン,ケイト[クイン,ケイト] [Quinn,Kate]
南カリフォルニア出身。ボストン大学で古典言語の学士号と修士号を取得した。これまでに古代ローマを舞台にした4作と、イタリアのルネサンス期に悪名を馳せたボルジア家を描く2作の歴史小説を上梓
加藤洋子[カトウヨウコ]
文芸翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
129
自らを"悪の華"と称して誇りと反骨心を見せる女性たちが主人公のスパイ劇であり、執念のロードノベルであり、ロマンスもあって読みどころのある小説だった。初めは読み進みにくかったが徐々に物語に入り込む。スパイを志願したイヴは何かを成し遂げたいという思いだけで未知の戦場へ。任務の苦しさと緊張感、その息遣いが強烈に読み手に迫ってきた。シャーリーも自分の生き方を求めて親友の行方をなりふり構わず探し続ける。二人の人生がクロスした先にあったのは果たして…。著者あとがきで幾つかのエピソードが史実だと知ってより感じ入った。2020/04/21
Panzer Leader
94
WWⅠ中ドイツ占領下のフランスでスパイとして活躍したイヴとWWⅡ終戦後に戦時中に行方不明となった従妹の足取りを探すシャーリー。この二人が交差するとき物語は新たな展開を見せ始める。史実とフィクションを巧みに混ぜ合わせた力作ではあるが、一番魅力的な登場人物は先の二人ではなく本来なら脇役であるスパイ情報網の元締めアリスであるところがちょっとバランスの悪さを感じる。余分なロマンス部分も含めて詰め込み過ぎ感があるものの、読み応えは抜群に良い。2022/02/02
のぶ
93
読み始めは、静かな語り口の文章に、つかみどころを見いだせなかったが、読み進むにつれ戦争を通しての女性の生き方に入り込む事ができた。物語は1947年(現在)の大学生、シャーリーと、1915年の第一次世界大戦時にアリス・ネットワークというスパイ組織で活動するイヴの話が交互に語られる。イヴのスパイとしての生き方と、フランスで消息を絶った従姉妹を探すシャーリー。ある時から二人の運命が絡み合い、過去の秘密が明らかになる。戦争という時代を生きた女性を浮かび上がらせるストーリー進行が見事に纏まった作品だった。2019/06/15
星落秋風五丈原
89
原語版も翻訳版も表紙のシルエットの女性の向こうに見えるのはビッグ・ベン、とくれば舞台はイギリス。イギリスでアリスと言えば、後先考えずウサギを追って穴に飛び込んでしまったあの少女が思い浮かぶ。本書のアリス達も自ら危険な穴に飛び込む勇気を持っていた。しかし動機は単なる好奇心でなく、熱い愛国心だった。ベースは、第一次世界大戦ドイツ軍占領下のフランスを舞台に実在した女性スパイ”アリスネットワーク”だ。リーダーのルイーズ・ド・ベティニは、敵国の大砲の位置を思いも寄らない方法で迅速に知らしめたという伝説を持つ。2019/04/30
キムチ
82
1915年と1947年、女スパイ イヴと従妹を探すシャーリーが交互に語られる。かなりのボリューム。頑張って読んだ・・というのは出だしはスパイものという非日常の華やか❔さが有ったが続くと退屈が勝ってくる。数年前 H・ボナム・カーターが出ていた映画とシーンが重なった・・≪未来を花束にして≫あちらはスクリーンで「魅せる」内容だけに戦争ロマンスという意味合いが強く、悲劇性が薄らぎ エンタテインメントだった。最近、女スパイもの読書が続いた為、評価が辛くなったとはいえ 従来ものを超えるものではなかった。素材は良いけど2020/08/10