内容説明
大学病院でリューマチ科の医長を務め、診療に忙殺されていた「わたし」はある日、声帯にガンができていると診断された。これまで40年以上も、我が物顔で出入りしていた病院を、ガン宣告を受けた一患者の眼から見直したとき、見慣れたはずの病院は不安ばかりをかきたてる場所として映った―。著者は、末期ガン患者との心の触れ合いを通して、真の治療の姿に目覚め、医者と患者がすれちがう医療現場の問題点を指摘する。ウィリアム・ハート主演で映画化され、話題をよぶ感動の医療ノンフィクション。
目次
発病
治療
その後
仕事への復帰
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
akane
1
訳者によると、「こいつだけは医者にしたくないと思う学生が、毎年ひとりは医学部に入学してくる」 と某大学医学部教授が語っているのを聞いたとか。本書の後でこのエピソードを読み、「すごく的を得たあとがきだなあ」 と妙に感心した。がん患者として医師自身が医療を受ける立場になる体験記だが、本人の病状、治療、その他諸々に一喜一憂する生々しい感情が、まるで手に取るように鮮やかに描かれていて、最後まで興味が尽きない。これが本当に70をすぎた人の文章だろうかと、読書中ずっと信じられない思いだった。訳者の技術も高いと思う。2014/08/09