内容説明
7月19日のその夜、メイン州西部の全域が、未曽有のはげしい雷雨にみまわれた。嵐に脅える住民たち。だが、その後に襲ってきた“霧”こそが、真の恐怖だったのだ。その霧は街をおおいつくし、人々を閉じこめてしまう。奇怪な霧に閉じこめられた人々の動揺と冒険を描く中編『霧』、シカゴのやくざたちの結婚式で演奏したジャズ・バンドの災難『ウェディング・ギグ』、3百年前の鏡台の鏡の片隅に映る影『死神』など、恐怖小説の王者が贈る短編傑作集『スケルトン・クルー』からの第1弾。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Tetchy
132
三分冊で刊行された短編集の第1冊目。この奇妙な題名の作品はなく、この短編集を総じて表したもの。序文にあるようにキングが案内人となり、死に纏わる話の旅に出る読者そのものを指しているように思える。本書に収められた「カインの末裔」の如く、思わぬ不意打ちを食らい、「死神」のように見てはいけない物を覗き、そして「ほら、虎がいる」のようにページを捲った先には虎に遭遇するかもしれない。それはまさに「霧」のように内容も全く先が読めない。次作も作者の案内されるまま、奇妙で不思議な、そして恐ろしい世界へと足を踏み入れよう。2018/12/17
藤月はな(灯れ松明の火)
70
映画にもなった『霧』のミルクに浸かったような霧の中に得体の知れない「何か」によって人々が殺される場面の緊迫感が凄い。存亡が掛かっているのに浅慮や社会的地位の振りかざし、地域での軋轢で決別して最悪な結果になるという描写もリアル。そして『屍鬼』(小野不由美)の伊藤郁美のようなカーモディ夫人が生贄を持ち出した時は本当にゾッとした分、ミセス・レプラーの理性を失わない気丈さは本当に救いでした。『ウェディング・ギグ』のギャグ感に対し、『死神』のじわじわくる怖さと『カインの末裔』のクレイジーさにもいい意味で呆然。2014/09/07
harass
41
はるか昔に読んだ『霧』を思い返しこの本を探し出す。夏の嵐に襲われた避暑地に住む主人公は息子と隣の弁護士とともに、スーパーマーケットに買い物に出かける。混雑したスーパーは濃い霧に辺りを包まれていく。その霧の中には…… 約220ページの中編で久しぶりのキング節にページが止まらなかった。ストーリーとしては王道パニックホラーで、徹底した主人公固定視点で描かれている。この『霧』は早川の『闇の展覧会』というアンソロジーにも収録されていて、『ミスト』という題名で映画化されている。絶望感に満ちたおぞましい傑作。2015/08/18
トムトム
26
握手しない男、そういう呪いをかけられたから。悲しいお話です。霧はいわずもがななので書かない。意外と好きなのがウエディングギグ!マフィアの結婚式。笑ってはいけない結婚式。さて、どうなる?こういう話も書けるから、キングはすごいと思う。2020/01/03
ぎん
24
月イチキング。これは傑作中編「霧」を読むために何度も引っ張り出してたのでカバーがもうぼろぼろ。映画も良かったけど、映画しか知らない人には是非読んでほしいなぁ。 短編集「スケルトンクルー」の一分冊めなので、しばらくキングの短編にどっぷり浸かります。2016/10/04