出版社内容情報
ゲームが大好きな13歳のサフィヤには、離婚して離れて暮らす母がいる。週に一度の面会日、母とけんかをして別れ、次に会う約束もせず友だちと遊んでいた。ところがその日、母は脳卒中で昏睡状態に…。サフィヤが病院で眠る母によりそうと、母の香水のにおいがし、なぜだか暑く、砂が舞う異世界にいた。そこは、母が少女時代を過ごした、1980年代のクウェートだった。病室から母の記憶の世界に入るうち、母の大切な思い出のアイテムを集めれば母を目覚めさせられると気がついたサフィヤは、得意なゲーム攻略の知恵を生かし、母を救おうと励むーー心を揺さぶる、母と娘の物語。
内容説明
倒れた母の病院にいたはずのサフィヤが気がつくと、星がまたたく異世界にいた―。手をのばして、星をつかみたい。そしたらきっと、ママにもっと近づける。心揺さぶる、母と娘の物語。
著者等紹介
ブシュビー,アイシャ[ブシュビー,アイシャ] [Bushby,Aisha]
子どもの本の作家。バーレーンに生まれ、クウェート、イギリス、カナダで暮らし、現在はイギリス在住。イギリスの大手書店ウォーターストーンズでアルバイトをしながら執筆に励み、作家として活動を始めた。デビュー作である本書はカーネギー賞の候補作品、ブランフォード・ボウズ賞の最終候補作品に選ばれた
吉井知代子[ヨシイチヨコ]
翻訳家。大阪市立大学文学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
くるり(なかむらくりこ)
6
けんか別れしたまま病気でこん睡状態になってしまったママと、ママをどうにかして助けたいサフィヤ。あらすじから、悲しい話、感動的な話、母と娘の美しい絆の話、いろいろ想像して、実際そうではあったけれど、あとがきで訳者の吉井さんが書かれているとおり、これはなによりも「救いの物語」だと思う。サフィアが見つけた、最後の「鍵をあける言葉」、それを口にできたこと、それはサフィアとママふたりともの救いになった。わたし自身は、たぶんまだ、その言葉を口にはできない。サフィアはもちろん、サフィアのママよりもずっと年上なのに。2023/10/17
shoko.m
6
趣味も気も合わないママとケンカをしたあと、ママが倒れて昏睡状態に。アニメやゲームが好きな13才のサフィヤは、幼馴染の親友とのずれやママへの罪悪感の中、ふしぎな体験をし、その中でママを助けようとする。夢の中で子どもの頃のママと会い、それが現実とリンクするという設定にはじめは少しとまどったが、そのヒントを元にママを理解していくという展開がおもしろい。ゲーム好きの女子が出てくるのは見たことがあるが、ジブリ好きというのは新鮮に感じた。サフィヤのママの香りを想像しつつ読み進み、最後は涙した。2023/09/17
Incisor
5
けんか別れしたママが脳卒中で倒れて昏睡状態に。後悔にさいなまれるばかりの13歳のサフィヤは、不思議な手がかりから、子どもの頃のママの記憶の世界にはいりこむようになる。そこで見た、ママの過ごしてきた思い出がサフィヤを励まし、自分のやりたいこと、好きなものに気づかせ、背中を押すようになる。やがて、サフィヤはママの本当の願い、思いを知り、命のきらめきを受け継いでいく。辛くて悲しい物語だけど、「じつは合間に幸せを感じることもできる。くもりの日に光がさすみたいに。」サフィヤのことばにたしかな希望を感じた。2023/08/31
mikiron
2
最後まで読んでタイトルに納得。すれ違う母と娘の関係に、自分と実母を重ねたり、わが子との関わり方を反省したり。成長とともに少しずつ複雑になっていく女子の友人関係もリアルに描かれ、主人公が殻を破って一歩踏み出す姿がとてもよかった。大切な人が永遠にそばにいるとは限らない、きちんと言葉に出して伝えなきゃ、としみじみ感じた。演劇、アラビア語圏の文化、ゲームやアニメの描写がどれも魅力的。2023/10/22