内容説明
下町の路地にぽつりと置かれた立て看板。実弥子が古い民家を借りて開いた絵画教室「アトリエ・キーチ」は、いつしか、さまざまな人びとが集う場所になっていく。一緒に絵を描くというささやかな時間は、人の心に何をもたらすのだろう―。
出版社内容情報
子どもも、大人も、どなたでも、絵を描きにきて下さい――。
イラストレーターの実弥子は、下町の路地に佇む古い民家を借りて、小さな絵画教室を始める。ひっそりと開いた教室だったが、類まれな絵の才能を持つ少年とその母親、長いつきあいの編集者、近所の小学校に通う子どもたち、隣人の母娘など、さまざまな人たちが訪れるようになっていく。
画家だった夫の突然の死を受けとめきれずにいた実弥子だったが、絵を教え、ともに描くことによって、少しずつ生きる力を取り戻していく……路地の片隅で紡がれる人の営み、絵を通したやわらかなつながり、静かな時間が丁寧に描かれていく。
坪田譲治文学賞受賞作家がおくる、やさしい再生の物語。