内容説明
父親の工場が倒産、高校も停学中の中井ケンジは、廃屋で謎めいた少年ツキオと出会い、奇妙な事件に巻き込まれる。一方、三年ぶりに七重町を訪れた滴原千秋は、住民の睡眠調査を行う団体に関する不穏な噂を耳にする。“呪われた土地”で起きる不可思議の連鎖、深まる謎の果てに、彼らが見つけるものは。衝撃の幻想ミステリー。
著者等紹介
倉数茂[クラカズシゲル]
1969年生まれ。2005年より5年間中国で日本文学を教える。2010年、「黒揚羽の夏」にて、選考委員の満場一致で第1回ピュアフル小説賞「大賞」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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信兵衛
25
意外にあっさり事件は終わってしまったかな、という観あり。 それでも最後に、友情がしっかり残ったと思える処が、爽快。2021/12/19
hukimax
11
『黒揚羽の夏』の続編。前作同様、仄暗い幻想系である。生々しいというよりも、むしろドライな印象を受ける文体ながら、なんとも言いようのない不気味さを感じさせてくれる。話の筋は一応青春ミステリだろうか。少女との出会い。将来への不安や葛藤。そして、謎。物語としてはわりと普通かもしれないが、全体を覆うダークな雰囲気のおかげで、終始緊張感が絶えない。さらに、なかなかに複雑でもあるのだ。噛めば噛むほど味が出る。そんな小説かもしれない。次に出るであろう『冬』にも期待。2013/12/27
椿子
11
これがポプラ文庫ピュアフルで!とちょっと思ってしまったぐらい、幻想的で妖しい小説でした。性を描いているところなんかはとても淫靡だったと思います。各々の登場人物が殆どあっち側にいるような人たちばかりなので、美和と秋のおじいさんが出てくるとほっとしました。序文でも紹介されていた稲生さんの「アムネジア」は、途中まで読んだことがあるのですが、だんだん怖くなって読めなくなってしまったんですよね…また読みたいです。この倉数さんの小説も続編があるのだろうか??美和のその後も知りたいし秋の成長も気になる。2013/11/11
NEWJPB
8
前作「黒揚羽の夏」と併せて読むと良いと思う。硬質な文体が昨今のゆるいミステリに慣れた向きからするとちょっと入り込みづらい感じを抱かせるかも知れないが、ゆっくり読んでいくと非常に練られた良い作品だと感じられる。中井英夫、中上健次、エドガー・アラン・ポーなど古今の純文学やミステリを横断する雰囲気と文体が非常に融け合っていて、素晴らしい。3回、3回読んでいただけると、きっといいことが起ると思う。2013/09/10
ニャーテン
6
オカルトチックな幻覚や黒幕の正体にドキドキするものの、前作から成長した分、千秋や美和の思春期のモヤモヤが深まって若さの勢いに差した翳りが気になる。所々ヒヤリとさせられる描写は好みなので、黒幕の行動の不可解さと幕切れの唐突さは惜しかった。前作では紗江良、今作ではケンジ、千秋にとって次はどんな出会いがあるのかな。冬、春と続くなら、最後は雪解けのように七重の町の呪いを解いて滴原兄妹には明るく笑ってほしい。2013/10/09