百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 149p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119211
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

「どうせ私なんかどうなったっていいんです」「死んだっていい人間は沢山あると思います」温泉場の別荘に雇われた「お夏」の率直な言葉に療養中の孤独な「私」は心動かされる。死を予感する者との不思議な結縁を描いた川端康成の『白い満月』。ふと顔をあげると壁に見慣れぬ染みが―。ささいな視覚の刺激が解き放つ想像力の奔流(ヴァージニア・ウルフ『壁の染み』)。夜の散歩者が幻のような物語を回想する尾崎翠の『途上にて』。詩的な直感に満ちた幻視的世界。

著者等紹介

川端康成[カワバタヤスナリ]
1899‐1972。大阪生まれ。1924年に横光利一らと「文芸時代」を創刊、新感覚派と呼ばれて文学界の一大勢力となる。『伊豆の踊子』『山の音』『雪国』など日本人の心のエッセンスを伝える作品を多数残した。68年に日本人初のノーベル文学賞を受賞

ウルフ,ヴァージニア[ウルフ,ヴァージニア][Woolf,Virginia]
1882‐1941。20世紀を代表するイギリスの女性作家、フェミニスト。文芸批評家の父を持ち、1915年に『船出』でデビュー。『ダロウェイ夫人』『灯台へ』『波』など、人間心理を巧みに描き出した作品を発表。日記や評論も数多く残している。生涯にわたって神経症に悩まされ、41年に自殺

尾崎翠[オザキミドリ]
1896‐1971。鳥取県生まれ。代用教員時代に雑誌で入選の常連となる。上京して文学に専念、『第七官界彷徨』などで注目を集めたが、幻覚症状がはげしくなり帰郷。以後は文学から遠ざかった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

アキ

81
川端康成『白い満月』17歳の女中お夏が父親の最期を夢で見たことを聞いた私は、海面の幻を見た。お夏は自分が死んだ夢を見る。私は月に引っぱられて膨らんでいる海面の幻が見えた。2人で死の予感に怯えながら彼女を抱いた。ヴァージニア・ウルフ『壁の染み』目に入った途端に心が惹きつけられ思考が動き出す。これから戦争が起こるという時代、すべてのものは動いている。消えつつある。尾崎翠『途上にて』図書館から自宅までに巡らす美しい少年の足の幻想。デザイアは人間を斃死させ、純粋な思慕は祈祷のかたちの死を与える。「幻」で貫く3編。2021/12/16

吉田あや

78
大好きな作家揃いの39巻のタイトルは「幻」。まさにぴったりな3つの短篇はどれも秀逸で、惑うような幻を見せてくれる。『姉の眼は澄んでいるが、妹の眼は濁っている』強烈な書き出しで始まる川端康成「白い満月」。肺病を患う主人公と女中のお夏、ふたりの妹を通して描かれる不思議なヴェールに包まれた「死」。全編を通して仄暗い死が通底しながらも、どん底に落ちた時に訪れる開き直りにも似た力が宿り、薄明りの夕空に浮かぶ白い満月のような儚い光を灯す。(⇒)2021/04/22

モモ

62
川端康成『白い満月』肺の病で温泉場の別荘で療養している私。そこを訪れた妹の八重子。夕空の白い満月の下で語られる、もう一人の妹の静江のこと。姉の元恋人と結婚した静江に悲劇が起こる。ヴァージニア・ウルフ『壁の染み』壁の染みから広がる想像。ウルフはやはり難しいと思っていたら、最後にずっこけた。ウルフのうふふと笑う顔が見えるよう。尾崎翠『途上にて』夜の散歩で父の暗示にかかったと嘆く男性の友人が現れ、また去っていく。「会話を忘れかかっている私の喉」という言葉が何だか悲しい。尾崎翠の作品をもう少し読んでみたい。 2020/08/14

アルピニア

61
「白い満月/川端 康成」主人公が療養先で雇った「お夏」は遠方に住む彼女の父の死を夢に見る。彼女が纏う諦めにも似た佇まいに興味を持つ主人公のもとに長妹が訪ねてきて・・。長妹と末妹との過去が明らかになる過程はサスペンスのようだと感じた。「壁の染み/ヴァージニア・ウルフ(西崎 憲 訳)」「途上にて/尾崎 翠」静かにさわさわと広がっていくような想念。身を任せて、ぼんやりと浸っていると何かが浮かび上がってくるのだが、見極めようと目を凝らすと消え失せてしまう。不思議な読書体験だった。2022/05/31

神太郎

41
幻想的な話が多かった。ヴァージニア・ウルフと尾崎翠は実際神経症も患っていたようなのでだからこそ見えてる世界ってこんな感じなのかも?川端のはやや、オカルト的だが読み終わったときに「こいつは……」って思わせるのは流石。ヴァージニア・ウルフはとにかく奇怪だがオチはおお?!って感じ。でも、奇怪な感じの演出がうまい。尾崎翠に関しては申し訳ないがあまりはまらず。夢想状態のまとまりのなさってこんな感じかも。掴み所がなく苦戦。2017/06/18

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