百年文庫

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  • サイズ B6判/ページ数 139p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784591119082
  • NDC分類 908.3
  • Cコード C0393

内容説明

冬枯れたリヨンの町を一望できるアパートに、ひとりの老学者が暮らしていた。その生活は驚くほど規則正しく、紳士然として見えたが…。静かな雪景色を背に突如、浮かびあがる人生の哀しみ(遠藤周作『シラノ・ド・ベルジュラック』)。天涯孤独の青年が隣家の窓にはじめて温かい「他者」を見出していくピランデルロの『よその家のあかり』。療養する少女の変化をみずみずしい生命感覚で描いた神西清の『恢復期』。沈黙に秘められた思いが室内楽のように響きあう。

著者等紹介

遠藤周作[エンドウシュウサク]
1923‐1996。東京・巣鴨生まれ。フランスに留学してカトリック文学を研究。帰国後に小説を書き始め、1955年に芥川賞を受賞。カトリック作家として日本人と神の問題を追求、またユーモラスなエッセイでも人気を得た

ピランデルロ[ピランデルロ][Pirandello,Luigi]
1867‐1936。イタリアの小説家、劇作家。早くから詩や小説に才能を発揮したが、次第に戯曲に力を入れ、20世紀演劇の革新者となり、1934年にノーベル文学賞を受賞

神西清[ジンザイキヨシ]
1903‐1957。東京・牛込生まれ。学生時代に堀辰雄らと同人誌を創刊。すぐれた作家だったが、それ以上にフランス文学、ロシア文学の名翻訳者として広く知られている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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新地学@児童書病発動中

117
百年文庫収録の短編はどれも面白いが、この巻の3篇は特に際立っている。遠藤周作の『シラノ・ド・ベルジュラック』は老いて厳格な学者が見せる哀しみが心に残る。結末で彼が流す涙は遠藤文学の精髄と言えるもの。誰も持っている弱さに対する作者の共感の象徴だと思う。ピランデルロの2編は短い話しながら、作者のストーリーテーリングの冴えを味わえる。神西清の『恢復期』は、少女を語り手にした繊細な文章が素晴らしい。名訳者でもあった作者の隅々まで気配りの行き届いた文章を堪能した。2015/04/19

えみ

62
内と外を繋ぐ。色彩豊かな光を取り込み、息詰まることの無いように新鮮な空気を通す内側の役割。一方で外側からはどうか。遮断されたプライベート空間で秘めたる本当の姿を覗き見るための役割として存在するのだろうか…。誰かが誰かの思いがけない一面を見る物語。3篇の短編を収録した『窓』。百年文庫シリーズ第26弾。老学者の哀しい叫びを見た、遠藤周作の『シラノ・ド・ベルジュラック』。人生や生活に孤独を温めた、ピランデルロの『よその家のあかり』。療養少女が新鮮な感性で目撃する、神西清の『恢復期』。覗く行為の背徳感が堪らない!2023/03/05

モモ

52
遠藤周作『シラノ・ド・ベルジュラック』留学先のリヨンの食堂で「妻を寝取られた」ウイ先生に出会う。淡々と規則正しい生活をする先生が、ある出来事で憔悴する。ピランデルロ『よその家のあかり』薄幸な青年が、隣家の家の窓から見える温かい夕食のひとときに心を奪われる。そして、まさかの結末が。女性が窓越しに目にする、不幸になった家族の姿が切なすぎる。『訪問』緑色、水色、空気、光の満ちた部屋で見る幻。神西清『恢復期』体調をくずし、熱海や軽井沢で療養生活を送る卵女子。ピランデルロの作品が心に残った。他の作品も読んでみたい。2021/01/21

アルピニア

48
「シラノ・ド・ベルジュラック/遠藤周作 」小説家を目指している留学生の私は「妻を寝取られた」学者に興味を持ち、フランス語の生徒として家に通う。師の秘密を暴こうと部屋を探っていてシラノの手記の写しを見つけ・・。「よその家のあかり、訪問/ピランデルロ 内山寛 訳」ほろ苦さを残す二編。特に「よその家のあかり」は、大切に、憧れていたものを自ら壊したやりきれなさを感じた。百年文庫の中で特に私の心に残る一篇。「恢復期/神西清」熱病から生還した少女の日記。次第に病室から窓の外へと感性が広がっていく様子が清々しい。2023/11/30

20
遠藤周作の「シラノ」は野次馬根性と下世話さと好奇心とが存分に発揮された作品。ピランデッロの「よその家のあかり」は孤独な若者が向かいの家の窓から漏れる灯りに癒されていく話。電車の窓から外を眺めて、一軒一軒の窓から漏れる灯りを見ると、この膨大な数の家々にそれぞれいろんな人が生きてて、いろんなことを凌いで、どうにかこうにかやってるんだよなあと妙な感慨にいつもとらわれる。一軒一軒の家が一冊一冊の本みたいなものだよなあ。2019/08/11

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