感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
らむれ
66
すごく綺麗な本。血なまぐさい天安門事件の合間に、視界に花びらが舞い入ってくるように美しい風景がふわっと浮かぶ。終盤、赤い服を着て燃えるような雅梅がとても印象的。現実としては彼女は捕えられたかもしれないし、悲劇に終わったかもしれない。けれど、自由に向かって進むこと、命を燃やすことにすべてを賭けた彼女の覚悟が山に登る足取りから伝わる。これがスイスでフランス語でしかもバルテュスの傍で書かれたなんて!しかも、渡仏後たったの7年で。彼女の作品をもっと読んでみたい。学生時代に出会って、論文とか書きたかったな! 2015/09/14
kaoriction@本読み&感想リハビリ中
25
気になる作家がまた一人。フランスのベストセラー作家シャンサ。本書は北京生まれの彼女が天安門事件を機にフランスへ渡り、フランス語で書き、ゴンクール最優秀新人賞を受賞した作品。「だれも本当のわたしを知らない。」思春期特有の感情と痛み。民主化運動の主犯となり追われる雅挴(アヤメイ)。翻弄される彼女の真の姿。旼(ミン)との恋愛と死。革命への闘士。趙(ヂャオ)将校の葛藤にも感慨深いものが。激動の日々を描いているのに俯瞰的で静謐、映像美的なのはバルテュス夫妻の影響なのかな?未来への希望と闘い、憂いの作品。じわり痛切。2015/09/11
星落秋風五丈原
7
だれも本当のわたしを知らない。封印された記憶。蘇る痛み。世界に裏切られたあの日から「罪人」になった−。民主化運動のヒロインと若き将校、2人の運命が絡み合ったとき、天の扉は開く。天安門事件を題材に描く小説。2008/09/17
madofrapunzel
6
★★★★☆ シャン・サのデビュー作らしい。デビューでこれだけ書けるとは…。洗練はないものの、既にあっさりとした文体を確立しており、物語は誰にでも読めるもの。フランスで評価されることにこそ意味があると言うべきだろう。2014/06/08
鳩とほっとしょうが
5
史実とファンタジーの要素が組合わさった不思議な小説だった。学生たちを先導したリーダーの一人アヤメイの逃亡と回想。具体的な経緯は一切語られないけど、初めての恋を否定し抑圧してくる両親、学校、社会への反抗の延長に活動への参加があったのかなと思う。海近くの漁村へかくまわれて森へ逃げこんだ後のアヤメイの描写は、村の言い伝えにある女神と重なって艶やかで美しい。本筋ではないかもしれないけど、中国出身の作家による本作の、日本とは近いようで全く異なるオリエンタルな美女の描写にすごくどきどきしてしまった。2020/05/31