内容説明
今日、グローバリゼーションの普遍的利益が主張される際、その基礎理論となっているリカードの「比較優位の原理」は、貿易収支の均衡と完全雇用という「特殊な場合」のみを説明する脆弱な論理にすぎず、ヒュームに由来する貨幣的自動調整メカニズムが背後で作動することを暗黙裏に想定している。この点はかつてケインズによって批判されたにもかかわらず、現代の経済理論を支配する「ミクロ/マクロの二元論」にもとづき、貨幣抜きの貿易理論、権力的要素を捨象した国際通貨の把握がいまなおテキストブックのなかで反覆されている。本書は、こうした非現実的な諸仮定が、いかなるプロセスで標準的理論として慣習化されていったのかを学説史のなかで追跡しつつ、リカードとヒュームを2つの焦点とし、ケインズを媒介項として、貨幣と権力を包含した現実的な視点から世界経済を分析する。
目次
教壇からの疑問
第1部 開放経済における「セイの法則」(「特殊ケース」としてのリカード・モデル;政策規範としてのリカード・モデル―ケインズの能率賃金論)
第2部 リカードから新古典派までの貿易理論史(リカード貿易理論の「原型理解」について;ミル父子によるリカード貿易理論の変型プロセス;新古典派貿易理論の誕生―「ケインズ革命」への不感応)
第3部 貨幣を操る権力(ヒュームにおける貨幣と権力;新古典派為替レート理論の検証)
「ケインズ国家」としての「帝国」
著者等紹介
田淵太一[タブチタイチ]
1964年、東京都生まれ。1987年、京都大学経済学部経済学科卒業、89年、京都大学大学院経済学研究科修士課程修了、92年、同博士課程単位取得退学。1992年、東京大学経済学部助手、95年、山口大学経済学部専任講師、97年、同助教授を経て、2005年、同教授(国際経済学・貿易論担当)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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