出版社内容情報
神を生み出したものは「無知と不安と災い」であるとの見方から,神話・神学はじめデカルトらの神の存在証明を批判して,無神論を擁護し,道徳との両立を論じる。
内容説明
人間たちの無知・恐怖・権威などが“神”を生み出したのだ。人類に破滅をもたらすあらゆる軽信・迷信・狂信の言説を排し、万物の主権者=自然の声に耳傾ける。理性と真理にのみ信をおく、宗教批判、自然主義の古典。
目次
神についての私たちの観念の起源
神話と神学について
神学の混乱し矛盾した諸観念
クラークによる神の存在証明の検討
デカルト、マールブランシュ、ニュートンらによる神の存在証明の検討
汎神論、あるいは神の自然的観念について
有神論、理神論、楽天主義の体系、目的因について
神の諸観念、またはそれらの観念の道徳、政治、学問、国民および個人の幸福への影響が人間にもたらす利点についての検討
神学的諸観念は道徳の基礎たりえない。神学的道徳と自然的道徳との対比。神学は人間精神の進歩を妨げる
神について与えられた観念から、人間は何も結論できぬこと。神にたいする人間の行動の自己矛盾と無用性について
本書中に含まれている諸見解の弁護。不信仰。無神論者は存在するか
無神論は道徳と両立可能か
無神論に行きつく動機。この体系は危険たりうるだろうか、庶民がこれを信奉しうるだろうか
自然の法典の要約
著者等紹介
ドルバック,ポール=アンリ・ティリ[ドルバック,ポールアンリティリ][D’Holbach,Paul‐Henri Thiry]
1723年、ドイツのエーデスハイムに生まれ、オランダのライデン大学に学ぶ。オーストリア王位継承戦争後、パリに出、叔父の遺産と貴族の称号を相続して男爵となる。フランス啓蒙期の数多くの思想家たち、とくにディドロと親しく、『百科全書』には鉱物学・化学分野を中心に400項目近くを執筆した。1752‐66年頃はドイツ科学書の仏語訳を出す仕事に携わる。その後、『暴露されたキリスト教』(1761)『自然の体系』(70)『良識』(72)『社会の体系』『自然の政治』(73)『倫理政治』『普遍的道徳』(76)などを著わしたが、すべて偽名で、また国外で出版された。それらが密かに国内に持ち込まれ、大革命への思想的土壌の形成に寄与した。その迷信打破と政教分離を明確に打ち出した反宗教的な諸原理と戦闘的かつ体系的な唯物論思想は、18世紀フランス啓蒙期の有数の遺産と言えよう。1789年、三部会開催の3カ月ほど前に没した
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