内容説明
20世紀を代表する政治思想家にして、一人のユダヤ人女性でもあったアーレント。その公共性の哲学を根底で動かしてきたものとは何か。困難な現実を知性によって「理解」し、言葉で物語ることを通じて世界との「和解」に達しうる精神の可能性を探る。思考する私たち自身を社会へと開いていくためのアーレント試論。
目次
第1部 言語(言語を信頼する―『ラーエル・ファルンハーゲン』をめぐって;世界の複数性にもどる)
第2部 思考(空間を創造する;過去と未来の間の裂け目で動く)
第3部 構想力(世界の中で方向を定める;感覚の世界から離れる)
第4部 文学(世界と和解する)
著者等紹介
対馬美千子[ツシマミチコ]
カリフォルニア大学バークレー校大学院博士課程レトリック学科にて博士号取得。筑波大学人文社会系准教授。表象文化論、文学への思想的アプローチ、言語思想(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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呼戯人
16
ハンナ・アーレントは、最も偉大な女性哲学者だと思う。この著作は、ハンナ・アーレントの物語哲学に焦点をあてて描かれた哲学の肖像である。生は思考であるが、思考は物語や詩に沿って働く。物語は無世界性の中で産み落とされ、唯一の個性として生きる人間が世界を理解し、理解の中で和解する形式の一つである。その意味でハンナ・アーレントの哲学は、生が思考において世界と和解する癒しの哲学なのである。マージナルマンとしてのユダヤ人は、無世界性の中で生きるが、青年も皆そうである。和解するそれこそ大人として生きることである。2016/05/16
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