目次
序 与えるモノ、買るモノ、与えるのも売るのも駄目で、手放せないモノ
1 モースの遺贈(名著の輝きとその影)
2 人間と神々の代替=物(ニューギニア・バルヤ族での聖物、貴重物、物=貨幣;ポトラッチ社会の出現と発展の仮説)
3 聖なるもの
4 魔法の解けた贈与
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
27
1996年初出。贈与はかつて市場と国家という権力にはさまれて立往生していた(6頁)。贈与は、贈与者と受贈者との間に社会的地位の差異と不平等を作りだし、不平等は階層性に変ることもある(17頁~)。贈与と反対贈与は社会生活、経済と道徳を根底において刻印している(62頁)。資本主義システムは構造で複雑でも、原理は単純。モースの社会システムを支配する原理と異なっている(94頁)。2015/10/12
roughfractus02
7
著者は『観念と物質』で観念と物質は単に反映的関係にはなく、思考なしに生まれた物質的関係(自然)に触れる人間が意図、指向、判断によって「観念的現実」を作ることで生まれるとした。本書では、モース『贈与論』で扱わない「神々への贈与」(シルック王国の玉座に宿る象徴性と権力の所有)や贈与を行わない社会(バルヤ族の女性同士を交換する婚姻)の事例から、象徴から想像に転化する「観念的現実」の傾向と神話象徴下で行われる交換を検討し、物質的関係に対するモノと観念の混淆を貨幣自身に見て、経済合理性に疑義を唱える(2004刊)。2024/05/07