出版社内容情報
20世紀の哲学思想に最大のインパクトをもたらしたニーチェ。ニーチェ自身によるボードレールほかフランス思想芸術の摂取から始まり、その遺産のフランスへの翻訳紹介、イデオロギー的曲解の数奇なプロセス、左右の文学者らによる毀誉褒貶の歴史、全集編纂の動向、実存哲学やポスト構造主義による再活性化にいたるまで、独仏間の「文化の移転」の実態を公平な視点で記述した第一級の受容史研究。
【目次】
はじめに
第1章 フランス化したニーチェ
ニーチェとフランス 『悲劇の誕生』の時期
フランス「デカダンス」派の薫陶
親密なるニーチェとボードレール
ボードレール、フランスのヴァーグナー
ルネ・シャール──ボードレール、ランボー、そしてニーチェ
第2章 「ニーチェはラテン世界の人間か?」論争
ニーチェはドイツ語で書いたフランス人か?
ニーチェとフランス──エリーザベト・フェルスター=ニーチェとそのフランス人助言者アンリ・リシュタンベルジェの定見のなさ
ロカルノ精神の標榜──「ニーチェに対するフランス思想の影響」
最もフランス的なドイツ人作家
第3章 『メルキュール・ド・フランス』誌とアンリ・アルベール
フランスとの最初の出会い、最初の誤解(一八七七─八九)
ガブリエル・モノー 文通相手にしてつつましき仲介者
初期の翻訳とフランス・ニーチェ主義の先駆者たち
エリーザベト・フェルスター=ニーチェの「ニーチェ著作権」奪回
アンリ・アルベール
『メルキュール・ド・フランス』のニーチェ
第4章 一八九〇年から一九一四年まで。フランスのニーチェ主義誕生第一の「契機」
ヴァーグナー主義の衰退、ニーチェ主義の台頭
慎重なアカデミズムの哲学者たち
伝統主義者まで読むニーチェ──エミール・ファゲ
ゲルマニスト 「文化の移転」の立役者
ニーチェは右翼か左翼か
ニーチェと向き合うユダヤ知識人
ある偶像の絶頂期
『ツァラトゥストラはかく語りき』リヒャルト・シュトラウス
アンドレ・ジッド
ポール・ヴァレリー
フランスのニーチェ主義 その壮大な第一の契機の驚くべき統計結果
第5章 ニーチェの伝記 ダニエル・アレヴィからギー・ド・プルタレースまで
ニーチェの伝記を書く──実行できないままであった課題
ダニエル・アレヴィ
ギー・ド・プルタレース
第6章 一九一四─一八年、大戦間、第三帝国
第一次世界大戦──ニーチェ主義を捨てるフランス人
二〇年代
シャルル・デュ・ボス
ジャン=ポール・サルトルのニーチェ的小説の計画
「知的ロカルノ精神」──ミュンヘンのニーチェ協会の