内容説明
線形的な社会科学の思考を脱構築する。グローバルなネットワークの「創発」が人びとの社会生活を根底から変えている状況を、複雑性科学の成果と可能性を援用/適応しつつ検討する。
目次
第1章 「社会」とグローバルなもの
第2章 複雑性への転回
第3章 「グローバル」な分析の限界
第4章 ネットワークと流動体
第5章 グローバルな創発
第6章 社会秩序化と権力
第7章 グローバルな複雑性
著者等紹介
アーリ,ジョン[アーリ,ジョン] [Urry,John]
1946年ロンドン生まれ。ケンブリッジ大学で経済学を専攻した後、1970年に社会学で修士号、1972年に博士号を取得。1970年以降、ランカスター大学で教鞭を執り、現在、同大学の社会学科教授(distinguished professor)をつとめている。同時に、英国王立芸術協会のフェローなどを併任
吉原直樹[ヨシハラナオキ]
1948年生まれ。1977年、慶應義塾大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。東北大学名誉教授。大妻女子大学社会情報学部教授
伊藤嘉高[イトウヒロタカ]
1980年生まれ。2007年、東北大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。山形大学大学院医学系研究科助教
板倉有紀[イタクラユキ]
東北大学大学院文学研究科博士後期課程在籍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひつまぶし
3
自然科学から発想を借りるのが悪いわけではないが、複雑性にしろグローバル化にしろ、結局、何でも説明できる代わりに確かなことは何も言えていない。人の生きる世界に法則や構造を見出せるからといって、説明できた部分は全体からするとほんの一部でしかないことを、だいぶ過小評価していたのではないか。そういうことに気付き始めてなお、不十分な全体像を思い描こうとしている。観察主体があってシステムがあるようなことは言うくせに、根本的なところで客観主義的な科学から抜け出せていない。もう、そのような科学自体を放棄したらどうなのか。2021/09/05
環世界
0
単線的な現象ではなく複雑系としてグローバル化を論じようという本。複数ある選択肢の中からガソリン車がたまたま選ばれたことによって現在の車社会とその諸問題が現出したというように、偶然的な出来事が予期せぬ大きな帰結をもたらすという点は世界の見方として納得できる。ただし、「創発」という言葉を使われるとなんとなくごまかされたような気分になるのも事実。もう少しANTっぽくアクターを追った方がよい気もする。探究の手始めとして。2021/04/06