内容説明
全体社会は政治システムそのものであり、その環境でもあると考えていたルーマンは、政治をめぐる権力や国家の意味、市民社会などをどのようにとらえていたのか?
目次
第1章 社会の政治―問題提起
第2章 権力というメディア
第3章 政治システムの分出と作動上の閉鎖性
第4章 政治的決定
第5章 政治の記憶
第6章 政治システムの国家
第7章 政治的組織
第8章 世論
第9章 自己記述
第10章 構造的カップリング
第11章 政治の進化
著者等紹介
ルーマン,ニクラス[ルーマン,ニクラス] [Luhmann,Niklas]
1927年ドイツのリューネブルクに生まれる。1968‐1993年ビーレフェルト大学社会学部教授。1970年代初頭にはハーバーマスとの論争により名を高め、80年代以降「オートポイエーシス」概念を軸とし、ドイツ・ロマン派の知的遺産やポスト構造主義なども視野に収めつつ、新たな社会システム理論の構築を試みた。1990年前後よりこの理論を用いて現代社会を形成する諸機能システムの分析を試み、その対象は経済、法、政治、宗教、科学、教育、社会運動、家族などにまで及んだ。1998年没
小松丈晃[コマツタケアキ]
1968年宮城県に生まれる。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。現在、北海道教育大学函館校准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
7
著者の遺稿の1つである本書は、著者の政治論を11章で段階的に辿る編集になっている。著者は近代以後の分化社会の政治機能を全体社会(Gesellschaft)の一部とし、他のシステムとの構造的カップリングする自己再帰的なシステム内のコミュニケーションを、政治システム内の決定、記憶、国家概念、組織、世論の組み合わせから描き、外にある他のシステムとの重合的カップリングを、自己記述、代表、主権、民主制を構築する過程として構成主義的に捉え直す。著者の政治論は従来政治学の術語を用いないジンメル以来の形式社会学とされる。2024/08/01
ぷほは
2
セールの『寄食者』の論理はたびたび参照されるものの、この時期に描かれている議論では『社会の経済』に登場していた「悪魔的一般化」という用語は登場せず、もっぱら権力というメディアのシンボリックな側面が説明の対象となっている。循環と逆循環の二重の循環、コンセンサスとディッセンサスの相互作用と反作用等、ガトリングガンのように連発される論点の数々ではあるが、権力論と「集合的な拘束力のある意思決定」という政治システムの本筋を押さえることができれば、まだ眺め通すことはできるか。前期著作の『権力』なども読む必要がある。2017/01/27