出版社内容情報
ルクレティウス『事物の本性について』を流体の力学=物理学の書として読み解き,古代原子論を現代科学の目で再評価しつつ,もうひとつの科学=知の可能性を探る。
内容説明
古今東西の最高の哲学詩にして古代原子論の最も系統的な叙述とされるルクレティウスの『事物の本性について』を流体の力学=物理学の書として読み解き、カオスや偶然性を対象とする原子論を現代科学の目で再評価しつつ、もうひとつの科学=知の可能性をさぐる。
目次
プロトコル
数学
模型への回帰
実験
諸条件
応用―テキストの生成
歴史
倫理
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roughfractus02
5
ルクレティウスの原子論は、固体から連想される原子を当てはめると矛盾に満ち、軌道からのズレ(クリナーメン)が軌道から逸れて宇宙を生み出すという考えは詩的とも解釈された。が、著者はこのズレを流体として捉え、しかも軌道を成さない流れ、乱流が宇宙の創成にあり、軌道を作る流れをその特殊例として従来の解釈を反転する。科学認識論に向けたこの批判を、本書はバシュラールの進歩を前提とした歴史観にも向け、古代原子論が近代に発見されるのは時間直線上を進むのではなく別々の世界が遭遇したと主張し、乱流からなる複数の歴史を提起する。2024/08/26