出版社内容情報
自我と文化のかかわり,文化のなかの自我のありようをテーマに,自己疎外の超克をめざす近代精神の苦闘の道程をたどる。アメリカ批評界の重鎮トリリングの代表作。
内容説明
自我と文化のかかわり、文化のなかの自我のありようをテーマに、自己疎外の超克をめざす近代精神の苦闘の道程をたどる。人間存在の稀薄化が進行する〈今〉、あらためて世に問うトリリングの代表作。
目次
1 誠実―その起源と発生
2 正直な魂と崩壊した意識
3 存在感と芸術感情
4 英雄的なもの、美的なものと《ほんもの》と
5 社会とほんものの自我
6 ほんものの無意識
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
11
二十世紀前半に小説の終焉という言説が現われた背景には、自我という考えの没落があった。近代小説は自我が己を発見する物語であったから、この自我に疑問符がついて小説が書けなくなった。しかも小説自体がこの自我の抹殺を率先して実行した面がある。なんとなれば、誠実たるべき自我だと思っていたものが実はほんものの自我でないことが明らかとなった。人は根底まで社会に貫通されてる。ほんものの自我は探さないと見つからない。偽りの自我を破壊しないとならなかった。だが、玉ねぎみたいにいくら皮をむいても核となるものは見つからなかった。2023/01/14
きつね
5
良書。ルソー、ゲーテ、フロイト…諸テクストを横断し、近代文学が〈誠実〉な〈ほんもの〉の自我を問題化することで展開してきたと示唆。やや論旨が追いにくく、結論は付されていない。〈誠実〉に〈ほんもの〉の自己を語るとは日本近代文学において長らく信奉された観念でもあり、訳者あとがきに触れられる江藤淳のフォニイ論争当時ですら、その文脈の中にある。今日、著者の批判する狂気=個性説のなんと陳腐化したことか。病める芸術家を論じれば、お手軽に人間の真実を覗き込めるのだー〈誠実なほんものの自我〉幻想を投影するスクリーンとして。2013/06/06
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