内容説明
『源氏物語』は、書かれた言葉によってこの世に存在している。その言葉は、物語中の随所で、複雑にしてゆたかな意味を生成しているが、同時にそれは、単なる書き言葉ではなく、作中人物の発言あるいは心中の言葉、さらに物語を口頭で伝える人、それを書き取る人、書かれた言葉を書き写す人、編纂する人…、等々のさまざまな声が重なりあっている言葉として、異彩を放っているようにおもわれる。それらのさまざまな声=「話声」から、『源氏物語』の言葉の魅力と特質とを解き明かしてゆく。
目次
序章 『源氏物語』の言葉といかに向きあうか
1 『源氏物語』の話声(作中人物の話声と〈語り手〉―重なりあう話声の様相;『源氏物語』古注釈における本文区分―『光源氏物語抄』を中心に;『源氏物語』の〈語り〉の本性―作中人物どうしの話声の重なりあい;女房の話声とその機能―「末摘花」巻の大輔命婦の場合;〈語り手〉の待遇意識―貴公子に対する待遇表現)
2 光源氏をめぐる〈語り〉―第二部とその前後(光源氏をもどく鬚黒―出来損ないの〈色好み〉が拓く物語世界;六条院世界をみつめる明石の君―明石の尼君の待遇表現の分析から;秋好中宮と光源氏―第二部における二人の関係性をめぐって;六条御息所の死霊と光源氏の罪―死霊の語った言葉の分析から;「柏木・女三の宮事件」最後の〈語り〉―薫誕生と女房たちの沈黙;光源氏の最後の「光」―「幻」巻論;「光源氏の物語」としての「匂宮三帖」―「光隠れたまひにしのち」の世界)
3 『源氏物語』の話声と〈書く〉こと―物語世界を超えて(紫式部という物語作家―物語文学と署名;物語作家と書写行為―『紫式部日記』の示唆するもの;『源氏物語』と書写行為―書写者の話声;『源氏物語』と唐代伝奇―物語伝承の仮構の方法;『源氏物語』とのヘテロフォニー―重なりあう話声と〈読む〉こと)
著者等紹介
陣野英則[ジンノヒデノリ]
早稲田大学文学学術院教授。専門は平安時代文学、物語文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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