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内容説明
江戸時代には書物を読むことのできる人びとが庶民にまで広がった。その読書熱を支えた書物流通の拠点が貸本屋である。読者の興味をそそり、見たことのない世界や名所旧跡へ連れ出す書物、隠された秘密や真相を解き明かす書物、便利性に満ちた生活実用書―これらをすぐに調えて手元に届けるのが貸本屋であった。また、読書熱の高まり、さまざまなジャンルにわたる出版文化の広がりは、近世における創作の場においても、大きな影響を与えた。特にその浩瀚な知識を自らの作品に注ぎ込んできた近世を代表する作家・曲亭馬琴の日記には、近世知識人と書物の関係をまざまざと伝える、特筆すべき内容がふんだんに含まれている。長年にわたり諸資料を博捜してきた筆者が、江戸時代の貸本屋の展開、そして、書物と人びととのかかわりの諸相を描き出す書籍文化史論。
目次
第1部 本のある風景
第2部 近世貸本屋の展開(貸本屋研究の意義;四民の読書熱;貸本屋の仕事;法制と貸本屋;作者・板元・貸本屋 ほか)
第3部 馬琴の書物探索と貸本領域(馬琴の書物愛;知識人との書物貸借;馬琴作品の愛読者たち;馬琴と貸本屋;馬琴の本屋探書 ほか)
著者等紹介
長友千代治[ナガトモチヨジ]
昭和11年宮崎市生まれ。35年佐賀大学卒業、45年大阪市立大学大学院博士課程修了。大阪府立図書館司書、愛知県立大学・京都府立大学・佛教大学教授を歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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緋莢
12
図書館本。書物を読むことの出来る人が庶民にまで広がった近世。庶民の興味は道徳書や教養書、実学書よりは、面白さや珍奇さに満ち溢れた書物となる。それが貸本屋の誕生と発展の原動力であった…というのが、<はしがき>の一部にあります。書物の外は友もなき庵、徒然草を徒然に見るなどの雑排もあるようです。<貸本屋が大風呂敷や背負箱に書物を見せながら得意先の家々を訪ね巡る姿はよく知られており> という辺りに、宮部みゆきの時代小説を思い出しました。 (続く2024/07/10
momen
0
前半は江戸時代の貸本及び出版ビジネスの概説、後半は滝沢馬琴の出版と執筆の具体例。出版関連の記録や日記・手紙を大量に引用しており、貸本・販売・出版が一体化した店や温泉での貸本、海外のパルプを思わせる小型で安価な娯楽本など様々な出版ビジネスが伺える。大衆に受けるのは学問よりも挿絵と卑俗な内容がメインの娯楽本なのは現代の娯楽と変わらず、人心の不変性が見て取れる。馬琴は書物から知識や思想を学び取り作風に生かしていた一方、当時は印税システムがなく版元や書店が儲かる仕組みで、賃金交渉や金の工面に苦労しており世知辛い。2024/05/13