内容説明
15世紀末から開拓され、ヨーロッパがアジアと出会った海上路、東インド航路。この航路は、大西洋を南下して、喜望峰を越え、アジア各地へと至る長距離ルートであった。以降、スエズ運河開通によりルートや移動手段が多様化するまで、多くの人やモノがこの航路を往来し、多数の記録簿や報告書、書簡、日記などの史料群が残された。このような史料の書き手であった移動者であるヨーロッパ人と移動先のローカルな人々との関係は、航路上にあった「接触領域=コンタクト・ゾーン」の中で取り結ばれ、記録された。航路の変遷をたどり、そこに残された史料から、現地の人々の営みや関係性、特に奴隷や移動労働者といった可視化されにくい人々の輪郭を探る。
目次
第1部 長距離航路からみる世界(東インド航路のなかのアフリカ;ケープ・ルートの多様化とオランダ東インド会社のケープ居留地建設;近代中国学の誕生とロバート・モリソン;植民地をつなぎなおす―スペインとポルトガルの帝国再編;スペインとキューバ、アフリカをつなぐ非合法奴隷貿易のネットワーク)
第2部 史料が描く接触領域としての島々(文書館史料を通じて人と出会う―マダガスカル史研究史料としてのオランダ東インド会社文書;十八世紀末から十九世紀初頭のセント・ヘレナ島における移動と接触―イギリス東インド会社関連史料から)
第3部 史料のなかのケープ植民地(豊富なデータが開く歴史―ケープ植民地の統計史料;英領ケープ植民地における陸軍と関連史料 一七九五~一八二〇年;一八~一九世紀前半の南部アフリカにおけるイギリス系プロテスタント宣教団―移動史料研究の前提として;一九世紀前半の南部アフリカにおけるウェスリアン・メソディスト宣教団―史料の特徴とそのナラティヴ)
第4部 変貌する東インド航路と帝国(ポスターのなかのアフリカの「自然」―イギリス帝国通商局によるプロパガンダの環境史的考察;オランダ領東インドにおける旅券制度の展開―植民地パスポートの様式と機能をめぐって)