内容説明
チベット族がくらす「ジル村」。貧困と差別のなかで生きるグラには、ひとりだけ友だちがいた。その友だちが不慮の事故で死んだとき、疑いの目はグラに向けられた―。さまざまな人びとの思惑が入り乱れ、やがてジル村は激動する歴史の流れにのみこまれていく。村に息づく神秘と伝承が新しい秩序と制度と衝突するとき、壮大な悲劇が幕を開ける。
著者等紹介
阿来[アーライ]
1959年、四川省の生まれ、母親がチベット族、父親が回族。小中学校の教師を経て、85年から文学雑誌の編集者となった。かたわら、文学創作を始める。長篇『塵おさまりて後』(1998)は四川省のチベット族地区の族長一家の盛衰を描く大作で、第5回茅盾文学賞を受賞。現在は四川省作家協会の主席をつとめている
山口守[ヤマグチマモル]
1953年生まれ。日本大学文理学部教授。東京都立大学大学院博士課程満期退学。専門は中国現代文学、台湾文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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AR読書記録
9
物語として非常に読み応えがあり(「空山」シリーズ全巻訳出希望)、また「中国同時代小説」シリーズ1巻に少数民族の作家を持ってくる出版社の心意気を(勝手に)感じ、解説の充実度も有難い、今の私にとってとても有意義な本だった。解説にも「宿命のように訪れる近代化」「伝統対近代」「地方や農村の近代化における変容」といったように「近代(化)」への言及が多く見られるけれども、中国も、また日本も、そして世界各国とも、現代にあって抱える問題の多くは近代化によるもの、といえそうだと思っている。次の追求テーマは「近代化」に決定。2018/12/22
とおりもん
2
1章の方は座敷わらし伝説を思い出した。いじめられっこあるあるでもあるので面白く読めた。2章は滑稽さもあるが読むのがキツかった。もともと風景描写が綺麗な方なので災害、それも人災の描写と混乱する村人が辛い。祈祷師と大隊長とラマ僧、大隊長と熊の関係がいいな。全6章なので残りも邦訳して欲しい。2015/03/28
あや
0
1967年とかの話なんだけど『チベット昔話』の様相。ラジオ中国語で紹介され読んでみたかった。2024/09/15