内容説明
国境を超え時間的制約を逃れ、人間の日常および精神生活の裏、奥、外に必要不可欠な空間領域として想像される「異界」―the other world―。その諸相を、グリム童話から日本の民話、ドイツ・中国・日本における文学・音楽・絵画表象、言語学からコミュニケーション研究に至るまで、空間、時間、学術分野の境界を超え、「超域」的に考察する。洋の東西を問わず、古代から現代に至るまで、人間の精神文化のなかに表現やかたちを変えながら偏在する「異なるもの」の多面的価値を浮き彫りにする。
目次
序章 異界を超域する試み
第1章 西洋における伝統的な異界とその表現―ドイツ伝承文学・比較民話学・音楽学(民話における「異界」との交流を可能とする仕掛け;ドイツの民間伝承における異界と異人 ほか)
第2章 東洋における伝統的な異界とその表現―中国古典文学・日本近世文学・美術史(洞天の風景―神仙グロットの地誌;黄表紙における異界表象―山東京伝『箱入娘面屋人魚』を例として ほか)
第3章 近現代の日本における総合体としての異界とその表現―日本語学と日本文学の一九‐二一世紀(句から語へ―「魔ヲ使フ女」から「魔女」への移行を一例として;歴史と「異界」の交錯―中里介山「夢殿」論 ほか)
第4章 現代日本における異界思想とその超域―言説史・社会言語学・文化原理考察(「異界」の諸相―語誌の展開をめぐって;「異なものとの交流」としての異文化コミュニケーション ほか)
著者等紹介
大野寿子[オオノヒサコ]
福岡県太宰府市出身。九州大学大学院文学研究科博士後期課程学位取得修了。博士(文学)。愛知教育大学教育学部専任講師を経て、東洋大学文学部准教授。専門は、ドイツ文学、民俗学。主に、グリム童話を中心としたドイツ伝承文学およびグリム文献学。研究テーマは、森と人間との関わりなど(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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