出版社内容情報
古来、文物・ひとを往還させる道であると同時にシステムでもあった、シルクロード。
西域の文物が、シルクロードをたどり日本にもたらされた現象と過程を、 運ぶ・所蔵する・記すなどの営みから見直すと、そこにはどのような意義が見出されるだろうか。
さまざまな領域の知見から描き出したときに立ち現れる、東西の文化の融合と展開のありようについて、 それを媒介する「道」―シルクロード―の意義とともに確認する。
序文 近本謙介
? 西域のひびき
小野篁の「輪台詠」について 後藤昭雄
敦煌出土『新集文詞九経抄』と古代日本の金言成句集 河野貴美子
曹仲達様式の継承―鎌倉時代の仏像にみる宋風の源流 藤岡穣
端午の布猴 劉暁峰
中世初期のテュルク人の仏教―典籍と言語文化の様相 ソディコフ・コシムジョン
『アルポミシュ』における仏教説話の痕跡 ハルミルザエヴァ・サイダ
『聖母行実』における現報的要素―『聖母の栄耀』との比較から 張龍妹
コラム 聖徳太子のユーラシア 井上章一
? 仏教伝来とその展開
天界の塔と空飛ぶ菩提樹―〈仏伝文学〉と〈天竺神話〉 小峯和明
長谷寺「銅板法華説相図」享受の様相 内田澪子
『大唐西域記』と金沢文庫保管の『西域伝堪文』 高陽
玄奘三蔵の記憶―日本中世における仏教東漸の構想 近本謙介
遼代高僧非濁の行状に関する資料考―『大蔵教諸佛菩薩名号集序』について 李銘敬
投企される〈和国性〉―『日本往生極楽記』改稿と和歌陀羅尼をめぐって 荒木浩
海を渡る仏―『釈迦堂縁起』と『真如堂縁起』との共鳴 本井牧子
文化拠点としての坊津一乗院―涅槃図と仏舎利をめぐる語りの位相 鈴木彰
あとがき 荒木浩
荒木浩[アラキ ヒロシ]
国際日本文化研究センター教授・総合研究大学院大学教授。専門は日本古典文学。
主な著書に『説話集の構想と意匠―今昔物語集の成立と前後』(勉誠出版、2012年)、『かくして『源氏物語』が誕生する―物語が流動する現場にどう立ち会うか』(笠間書院、2014年)、『中世の随筆―成立・展開と文体』(編著、竹林舎、2014年)、『夢見る日本文化のパラダイム』(編著、法藏館、2015年)、『徒然草への途―中世びとの心とことば』(勉誠出版、2016年)などがある。
近本謙介[チカモト ケンスケ]
名古屋大学准教授。専門は中世宗教文芸。
主な編著書に『春日権現験記絵注解』(神戸説話研究会編、和泉書院、2005年・2014年改訂重版)、『日光天海蔵 直談因縁集 翻刻と索引』(廣田哲通・阿部泰郎・田中貴子・小林直樹との共編著、和泉書院、1998年)、論文に「南都における浄土信仰の位相―貞慶と『春日権現験記絵』をめぐって」(『國語と國文学』〈中世文学と信仰〉九二巻五号、2015年)などがある。
李銘敬[リ メイケイ]
中国人民大学教授。文学博士。専門は日本中古中世説話文学・中日仏教文学。
主な著書・論文に『日本仏教説話集の源流』(勉誠出版、2007年)、「日本古典文芸にみる玄奘三蔵の渡天説話」(『東アジアにおける旅の表象』アジア遊学182号、2015年)などがある。
内容説明
ことばや造形、信仰のなかにあらわれる西域のひびき。アジア全域にさまざまなインパクトをもたらした仏教東漸。これらの文化の融合と展開の基盤には、道であり、システムとしてのシルクロードの存在があった。西域という場とそのイメージ、そして伝播の媒介となる「道」を焦点化し、諸領域の知見より、ひと・もの・知のクロスロードを描き出す。
目次
1 西域のひびき(小野篁の「輪台」詠;敦煌出土『新集文詞九経抄』と古代日本の金言成句集;曹仲達様式の継承―鎌倉時代の仏像にみる宋風の源流;端午の布猴;中世初期のテュルク人の仏教―典籍と言語文化の様相;『アルポミシュ』における仏教説話の痕跡;『聖母行実』における現報的要素―『聖母の栄耀』との比較から)
2 仏教伝来とその展開(天界の塔と空飛ぶ菩提樹―“仏伝文学”と“天竺神話”;長谷寺「銅板法華説相図」享受の様相;『大唐西域記』と金沢文庫保管の『西域伝堪文』;玄奘三蔵の記憶―『玄奘三蔵絵』と三宝伝来との相関;遼代高僧非濁の行状に関する資料考―『大蔵教諸仏菩薩名号集序』について;投企される“和国性”―『日本往生極楽記』改稿と和歌陀羅尼をめぐって;海を渡る仏―『釈迦堂縁起』と『真如堂縁起』との共鳴;文化拠点としての坊津一乗院―涅槃図と仏舎利をめぐる語りの位相)