内容説明
ふたつの世界大戦に挟まれた「戦間期」。勢力を増した日本の「東アジア」におけるプレゼンスは、「日本語文学」にどのような問題を突きつけたのか。メディアやツーリズムの発達、雑誌・出版・映画の興隆、植民地支配による異文化接触などを視野にいれつつ、一国主義的な文学概念を相対化し、「東アジア」の「日本語文学」の可能性と問題点を考察。現代の諸問題につながる“越境”のダイナミズムと、ハイブリッドな文化現象を照射する。
目次
メディア表象―雑誌・出版・映画(一九三二年の上海:戦争・メディア・文学―穆時英の『空閑少佐』をめぐって;中国モダニズム文学と左翼文学の併置と矛盾について―雑誌『無軌列車』、『新文芸』を中心に ほか)
上海文化表象―都市・空間(上海“魔都”イメージの内実―村松梢風・井東憲から横光利一へ;上海表象のリミット―横光利一と前田河廣一郎 ほか)
南方・台湾文化表象―植民地・戦争(佐藤春夫『南方紀行』の路地裏世界―厦門租界と煙草商戦の「愛国」;一九二〇、三〇年代の佐藤春夫、佐藤惣之助、釈迢空と「南島」 ほか)
北方文化表象―満洲・北京・朝鮮(まなざしの地政学―大連のシュルレアリスムと満洲アヴアンガルド芸術家クラブ;満洲ロマンの文学的生成―「満洲浪曼」と「芸文志」同人の活動を中心に ほか)