内容説明
日本人は、「日本」という国家のありようをいかに考え、論じてきたか―幕末における西欧列強への危機意識のなかで強力なイデオロギーとして醸成された後期水戸学による論から、終戦を経た新憲法制定、象徴天皇制に関わる国体論にいたるまでを通時的に解説。「日本とは何か」が問われるいま、国家の特殊性・固有性を志向する思想・言説の史的展開を探る歴史学としての国体論。
目次
序章
第1章 幕末、後期水戸学における国体観
第2章 啓蒙思想家の国体論
第3章 教育勅語と国体
第4章 帝国憲法の成立と国体論
第5章 北一輝の『国体論及び純正社会主義』
第6章 治安維持法の成立と国体
第7章 国体明徴(天皇機関説)事件と『国体の本義』
第8章 大川周明の『日本二千六百年史』をめぐって
第9章 敗戦と国体変更論
著者等紹介
小林敏男[コバヤシトシオ]
1944年長野県長野市生まれ。東京教育大学大学院文学研究科博士課程(日本史学専攻)単位取得退学。博士(歴史学)。大東文化大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
軍縮地球市民shinshin
15
著者は1944年生まれの大東文化大学名誉教授。日本古代史が専門らしい。定年退職したら近代思想史のこういった研究をし始めたのだろう。幕末の水戸学から明治の教育勅語や昭和初めの治安維持法、北一輝や大川周明などの「右翼」、戦後の国体論争にいたるまで(敗戦により国体は変わったのか、政府答弁は「国体は変更されていない」)の言説を分析したもの。美濃部達吉の意見がもっとも的を射ている。国体と政体は別物で国体は歴史的倫理的意味合いで語られてきたものであり、昭和初期の国家主義的に曲解されたものが国体ではないと喝破している。2020/09/28