内容説明
“個人を抑圧し、環境破壊を進める近代社会”と闘った熊楠の実像。自由民権・神社合祀・「エコロジー」をキーワードに、その生涯を追う。
目次
1 「明治」という時代とともに(城下町和歌山と熊野;「南方」という家、「熊楠」という名前;城下町若山の学問・文化・教育と南方熊楠)
2 在米民権運動とアメリカ時代の意味(熊楠の渡米と自由民権;在米民権新聞『新日本』からの手紙;南方熊楠所持の条約改正反対意見秘密出版書;アナーバーの回覧新聞『大日本』の再検討;補論 南方熊楠対長坂邦輔―『珍事評論』の背景)
3 ロンドンから熊野の森へ(孫文と南方熊楠;南方熊楠における珍種発見と夢の予告;「那智隠棲期」の検討)
4 神社合祀反対運動と「エコロジー」(南方熊楠と神社合祀反対運動;神社合祀反対運動の始動と展開;南方熊楠と世界の環境保護運動;日露戦後の自然保護運動と「エコロジー」;神社合祀反対運動における神社林と入会林;「大逆事件」と運動の終局)
著者等紹介
武内善信[タケウチヨシノブ]
1954年和歌山県に生まれる。同志社大学大学院法学研究科博士課程後期満期退学。和歌山市立博物館主任学芸員、和歌山城文化財専門員。専門は日本近代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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takeapple
8
南方熊楠が在米自由民権運動に関わっていた。特に井上馨の鹿鳴館的な欧化政策や、外国人判事の登用など国益に反する条約改正に反対の意思を持ち、発禁本を読み込んだり、反政府的新聞の通信員を務めていたとは、そして国家の胡散臭さに目覚めたというのは、流石だと思う。そして神社合祀反対運動を、地域主義と自然保護の観点から闘っていったということだ。国家神道と本来の神社の信仰や祭祀は別物で、今言われている日本会議的な神道なんて伝統でもなんでもないことがわかる。スラスラ読める本ではなく、熟読する必要あり。2017/05/26