平凡社新書
ツアー事故はなぜ起こるのか―マス・ツーリズムの本質

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 新書判/ページ数 198p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784582857283
  • NDC分類 689.6
  • Cコード C0265

出版社内容情報

秘境でのトラブル、山の遭難など、効率優先の団体旅行には常に事故のリスクが伴う。その原因の多くは運輸機関のミスに求められてきたが、じつは「客の尽きせぬ願望を叶える」というマス・ツーリズムの究極の原理こそが繰り返されるツアー事故を生み出していた。その代表的な例が、テクノロジーの進歩とともにエスカレートするエベレスト登山のツアー、南極旅行などだ。旅行代理店に20年勤務した経験をもち、その内情を知る著者が、観光業に潜む病理を問う。

はじめに──多発するツアー事故

第一章 マス・ツーリズムとは何か
大衆化する旅行──一九世紀半ば、トマス・クックからの始まり
クックによるマス・ツーリズムの広がり/マス・ツーリズム成立の原理/五種類のマス・ツーリズム

第二章 一九九六年五月 エベレスト商業公募登山隊の悲劇
商業公募登山隊とは何か/旅行形態の区分/二つの商業公募登山隊
参加者が映し出すマス・ツーリズムの実相/判断ミスはいかに起きたか

第三章 ツアー登山での遭難死
ツアー登山とは何か/トムラウシ山遭難事故の経過
なぜ遭難事故は起きたか/マス・ツーリズムとしてのツアー登山/ツアー登山は可能か

第四章 危険をはらむマス・ツーリズム
日本人観光客はなぜグアテマラで撲殺されたか
未開の地への旅──SITの極致/南極遊覧飛行機事故の衝撃
南極旅行はいかに成立するか/南極旅行、不可能性への挑戦

第五章 マス・ツーリズムの脅威
マス・ツーリズムが招く観光公害──石見銀山・大森地区の場合
観光公害をどう解消するか──岐阜県白川村の場合
エコツーリズムの誕生/屋久島縄文杉に迫る危機

第六章 マス・ツーリズムの誘惑──その魅力はいかに生まれるか
「近代のいま」──マス・ツーリズムの発生
「おわら風の盆」の旅行商品化──疑似現実という視点から
東北三大祭りと「盛岡さんさ踊り」、「杜の賑い」

第七章 ツアー事故は減らせるのか
進む安全対策/願望の抑制、もしくはツーリズムの多様化
観光形態の多様化/マス・ツーリズムの良質化

あとがき
参考文献

内容説明

秘境でのトラブル、山の遭難など、効率優先の団体旅行には常に事故のリスクが伴う。その原因の多くは運輸機関のミスに求められてきたが、じつは「客の尽きせぬ願望を叶える」というマス・ツーリズムの究極の原理こそが繰り返されるツアー事故を生み出していた。繰り返される事故の仕組みを、旅行業界の内情を知る著者が実例をもとに解明。

目次

はじめに―多発するツアー事故
第1章 マス・ツーリズムとは何か
第2章 一九九六年五月エベレスト商業公募登山隊の悲劇
第3章 ツアー登山での遭難死
第4章 危険をはらむマス・ツーリズム
第5章 マス・ツーリズムの脅威
第6章 マス・ツーリズムの誘惑―その魅力はいかに生まれるか
第7章 ツアー事故は減らせるのか

著者等紹介

吉田春生[ヨシダハルオ]
1947年生まれ。(株)日本交通公社(現JTB)に約20年間勤務。鹿児島国際大学教授(観光論専攻)。同大学生涯学習センター長を経て、現在は付属図書館長を兼務。営業現場、添乗などを通じて熟知した日本人の旅行形態からさまざまな観光の問題を分析する。著書に『観光と地域社会』(ミネルヴァ書房、第1回日本観光研究学会「学会賞観光著作賞」受賞)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ふたば

6
マスツーリズムが人々に与えた功罪は大きい。人々に日常から離れた楽しみを与えた。願望を実現させ、満足感を与え、生き生きとした生活を送る一つの方法となった。それは評価されるべき部分だろう。しかし、それは反面で、人は満足できない生き物であるということも、暴き出してしまったと言える。みんなが行くところには自分も行きたい。それも、できるだけ安く、出来るだけ快適にと願う。旅行会社はその要求に応えるために手段を講じる。結果、南極であろうと宇宙であろうと、金を積んで行けない場所はもはや存在しないとさえ言える。2020/02/03

yamakujira

5
考察する具体例が、エベレストとトムラウシでの大量遭難や秘境での事故って特殊すぎると思いながらも、顧客の要求、主催側のジレンマ、顧客のレベル、ガイドの危機管理能力など、同じような原因から平凡なツアーでも小さな問題はあるんだろうと想像できる。旅行会社のツアー催行が営利目的である限り安全軽視のリスクはぬぐえないけれど、同じような事故が繰り返されるのは旅行会社の怠慢と指摘するべきだ。個人旅行でも事故のリスクはあるのだから、「ツアー事故は必ず起こる」のを覚悟した上で参加しなくちゃいけないんだな。 (★★☆☆☆)2018/12/31

Humbaba

1
多くの人が参加できるように便利にする。確かにそれによって参加する間口は広がるかもしれないが、準備が必要な環境ということはそれだけリスクがあるということでもある。しかし、人の望みはきりがなく、ツアーとしてもできる限りそれにこたえようとしてしまう。リスクについてしっかりとした検討をした上で、通常の環境ではないので無理をしても誰も幸せにならないということを参加者自身が理解することも重要となる。2024/12/24

TERRY

1
「マス・ツーリズム」の概要について初心者にもわかる解説書。ただ、ネットのニュースやSNSを動機とする旅行活動が増えている中、この本に紹介された事例が少々昔のもののように感じた。2017/03/31

Humbaba

1
ツアーの客は参加するために多額のお金を支払っている。そのお金は本来は安全にそこまで連れて行くためのお金である。本当に相手のことを考えれば、不可能な場合には不可能であると告げるのが支払いへの対価となるのだが、様々なことを考え、希望的に行けるのではないかと判断する。それにより、悲劇が引き起こされてしまう。2014/05/18

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/8069074
  • ご注意事項

最近チェックした商品