内容説明
年頭、昭和天皇が崩御した。中国では民主化要求のデモを弾圧する「天安門事件」が起こった。中・東欧の共産圏ではソ連の軛が一挙に緩み、ドミノ式に政権が倒れた。さらに長く冷戦の象徴だったベルリンの壁が崩壊した。これらの事件が連鎖しながら起きた一九八九年の歴史的意味を探る。
目次
第1章 昭和天皇のトラウマ
第2章 社会主義が目指したもの
第3章 冷戦の構図
第4章 〓(とう)小平、ゴルバチョフの登場
第5章 天安門事件―「改革開放」とブルジョア民主化の間
第6章 東欧の「逆ドミノ革命」
第7章 ソ連・東欧の軛はなぜ緩んだか
エピローグ―一九八九年以後のソ連
著者等紹介
竹内修司[タケウチシュウジ]
1936年生まれ。59年、東京外国語大学卒業後、文藝春秋に入社し、雑誌、書籍の編集に携わる。2000年、退社。文教大学情報学部教授を経て、現在はフリー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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mitei
86
1989年って本当に世界史的に運命的なことが重なった年だなぁと感じた。生涯共産主義に抵抗し続けた昭和天皇が崩御した年に共産主義国家が波を打って崩壊し、共産主義国は世界で中共だけになったことが後から見るとすごいなと思う。中身は著者も言うように引用が多いだけで特に目新しい意見はなかったのは残念。あとからこの歳を振り返るようにはいいかもしれない。2013/11/06
姉勤
34
1989年。昭和天皇崩御に始まったこの年は、共産主義の終わりの始まりだった。この年の年誌というよりは、共産主義史略的な内容。その内容をふまえて、ソビエト連邦の解散、天安門事件、ベルリンの壁の崩壊、東欧諸国の民主化の起因年となった、1989年の意味を提示している。人間の理想社会を示そうとした共産主義も、人間が人間である限り欲と残酷と差別を生む装置となる。加えてそれらが、否定し難い理想が題目ゆえにタチが悪い。第2次世界大戦の総戦死者数よりも、戦後、共産主義国が殺した人の数の方が多い事実。2014/03/03
おおかみ
14
昭和天皇の崩御に始まり、天安門事件、ベルリンの壁崩壊、マルタ会談といった大きな出来事が相次いだ1989年(平成元年)。そのどれもが相互連関し惹き起こされていることに歴史のダイナミズムを感じる。社会主義は何を目指し、挙句ソ連消滅に至ったのは何故か、本書の主要テーゼは今なお検証を要するほどに複雑である。それにしても、国内で社会を揺るがす大事件が起き、海外で革命が連鎖したこの年は、2011年に似ているようにも思う。2011/04/15
makimakimasa
9
ちょうど30年前―共産主義にトラウマを持つ昭和天皇の崩御、その後に起きた天安門事件、ベルリンの壁崩壊、続く東欧諸国の逆ドミノ革命とマルタ会議による冷戦終結、そんな一連の出来事がよくまとまっている(少し分かりにくい部分もある)。前提となるソ連の成り立ちと冷戦の流れも、駆け足ながら2章を設けて説明。ただそうした事実の羅列に加え、あとがきで著者本人も認めている通り引用が多く、副題で謳っている様な独自の検証は思った程に認められなかった。日本的「昭和の終焉」という視点も無し(手塚治虫や美空ひばりの死は触れられず)。2019/10/06
ちっち
7
あとがきでは「ほとんど引用によって・・・」などと謙遜気味に記されているが、当時の史実を丹念に追った良書と思います。機会があれば、今後、より丁寧に一読してみたい。2022/11/12