感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saga
24
落語にも出てくる行き倒れ(死体)が日常的にあり、その処分も鷹揚であったことにまず笑った。本書の主題でもある御様御用(おためしごよう)と処刑にまつわる話は興味深い。当初、石出帯刀との関係が深いかと思っていたが、そこへの言及はなかった。武士にとって死や死体というのは恐怖の対象ではなかったということが感じられた。江戸の闇の部分をもっと知りたいと思う。2013/10/12
Moeko Matsuda
14
さすがの一言。もっぱら江戸文化の裏面に光を当て続ける歴史家の代表的著作の一つだ。いつもながら、やはりすごい調査力。題材が題材だけに途中でおえっとなることも無きにしも非ずだが、興味深く読めるのは著者独特の軽妙かつ丁寧な語り口のせいだろうか。武芸と平和の二律背反の中で生きたヒトキリアサエモンの姿は、平和の時代に生きる我々に「忘れるな」と語りかけているかのよう。我々が今踏みしめている大地に積み重ねられた歴史は、光だけではない。大江戸アンダーワールドを堪能できる一冊だ。2016/03/24
シャル
9
江戸時代、街にはいかに死体があったのか。刀剣試し切り稼業から見える江戸の死体と倫理の変化。長きに渡る平和の中で人を切ることの意味も変わっていくものの、それでも死体との距離はさほど変わらない。現代とはまったく異なるその感覚は、ところどころに挟まれる明治の事件を通してみることでより鮮明になっていく。それらを象徴するのは、本筋ではないが、死罪の後どのように死体を扱うかが罪状で異なるというものだろう。一般化していた試し切りとそれを取り巻く環境から、よくも悪くも複雑な状況が見え隠れする。江戸歴史と死体あり。2016/06/13
澤水月
9
「斬首」「試し斬り」を一家相伝してきた名跡、山田浅右衛門家の系譜をたどる。裏家業は生き肝の薬、刀のプロフェッショナルとして最高の尊敬を集めながらも浪人の身分とされ見下される二律背反。江戸も泰平が長く続くと、藩ごとの処刑も手を下す者がいなくなり、この一家の弟子筋が「一時雇い・首斬りの人材派遣センター」として機能するなど、実に瞠目の書。2010/01/29
hit4papa
7
死体が身近な存在であった江戸時代の史実です。死体にまつわる様々な当時の出来事が、豊富な資料をもとに紹介されています。世襲の処刑人首切り浅右衛門のお仕事を通して、今とは違った死生観が垣間見えるようです。