内容説明
《ユートピアの精神》《希望の原理》の2大著書で知られる孤高の哲学者エルンスト・ブロッホ。本書は,そのおいたちから〈成就としての死〉までを丹念にたどり,20世紀の激しい動きのなかで,自己の思想を置かれてきた状況とつねにあい関わせながら,〈希望の哲学〉を追究したことを浮彫りにする。そしてルカーチ,ヴェーバー,ベンヤミン,ショーレムら同時代人の言葉を織り込む〈モンタージュ〉の手法により,ブロッホの生涯を躍動的に描いている。ここではじめて,難解で近寄りがたいとされているブロッホが身近な人物となり,その問題設定が私たちのそれと接点を持つにいたるのである。
目次
序章 いまなぜブロッホか
1 成長と生成
2 青春の友ルカーチ
3 『ユートピアの精神』
4 反ファシズム闘争のなかの〈遺産〉
5 新生ドイツの道とブロッホ教授
6 希望は裏切られることがある
資料編(注と資料ノート;エルンスト・ブロッホ年譜;文献目録)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
呼戯人
13
再読。エルンスト・ブロッホの日本で初めての伝記。既成の全体主義的独裁に陥った社会主義を乗り越えるためのもう一つの選択肢を用意している。ファシズムに陥った故国ドイツを逃れアメリカで主著「希望の原理」に打ち込んだ日々が描かれる。どうやったらこの現在の窮境を乗り越えることができるかを思考する表現主義哲学の深部を明るみだそうと努力している。帝国主義の時代、ファシズムの時代に似通ってきてしまっている現代を乗り越えるための知見に満ちている。2018/08/20
キュアレフトの本棚
1
今ではほとんど知られていない気がする哲学者のエルンストブロッホの伝記。これを読んだからと言って完璧に理解できたわけではないが、音楽など芸術をも用いた希望に対するロマンティシズム的な認識論にはやはり底知れぬ魅力を感じる。また彼の著作にもチャレンジしたい2022/04/01
呼戯人
1
エルンスト・ブロッホを読む人が今でもいるのが、驚き。柄谷行人も褒めていたエルンスト・ブロッホの哲学を知るには、いい本である。2014/11/27