出版社内容情報
平凡社ライブラリー創刊25周年企画『中世思想原典集成』文庫化全7巻完結。本巻は13~15世紀の神秘家たちのパノラマ。エックハルトからクザーヌスまで。巻末エッセイは山内志朗。
内容説明
スコラ学の進展に伴う学知と信仰のさらなる純化・乖離の中、新たな神秘霊性の探求に向かう中世末期の思潮。マイスター・エックハルト、クザーヌスらドイツ神秘思想を軸にその諸相を。
目次
愛する者と愛された者についての書(ライムンドゥス・ルルス)
至福直観について(フライベルクのディートリヒ)
集会の書(シラ書)二四章二三‐三一節についての説教と講解(マイスター・エックハルト)
能動知性と可能知性について(グリュンディヒのエックハルト)
永遠の知恵の書(ハインリヒ・ゾイゼ)
説教集(ヨハネス・タウラー)
神秘神学(ジャン・ジェルソン)
先行する諸著作における主要な困難についての必要最小限の解決(カルトゥジア会のディオニュシウス)
信仰の平和(ニコラウス・クザーヌス)
テオリアの最高段階について(ニコラウス・クザーヌス)
感想・レビュー
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roughfractus02
10
教会を持たない托鉢修道士達は、中央教権に容認された後も各地で布教を行う。布教は多文化の交差する交易都市を中心とし、マリョルカ島やケルンがそのハブとなる。修道士に対してラテン語テクストの釈義を中心に行われる教会説教と異なり、彼らは、現地の習慣に染み込んだ民俗宗教に古代のギリシア教父の霊性を並置して、教会から異端とされる考えをも女性を含む民衆に直接現地の言葉で語り、聖俗混交した神秘主義を形成していく。一方、段階を経ずに至福を直観し、神的合一を目指す彼らの身体は、ペストが蔓延し大量死していく現実に覆われている。2020/03/19