目次
菊燈台
あとがきにかえて 少女コレクション序説(澁澤龍彦)
山口晃をめぐって 国民的画家のもう一つの天才(三潴末雄)
解題 澁澤龍彦航海記―ホログラム装置(高丘卓)
著者等紹介
澁澤龍彦[シブサワタツヒコ]
1928(昭和3)年、東京生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。サドをはじめとするヨーロッパ暗黒・異端文学の第一人者。政治の季節といわれた60年代に、『神聖受胎』『毒薬の手帖』『夢の宇宙誌』などの著作で、文学・芸術の視点から脱マルクス的思想を送り出し、文壇の左翼的土壌に激震を起こす。59年に翻訳したサドの『悪徳の栄え』が猥褻書とされ発禁処分(60年)となる。80年代以降は日本の古典によった独自の幻想文学の世界を確立、『唐草物語』(泉鏡花文学賞)、『うつろ舟』、『高丘新王航海記』(読売文学賞)などの傑作を生む。1987年、喉頭ガンで急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
双海(ふたみ)
20
「いっしょに死んで・・・」という帯に惹かれて、誰かと思ってみたら澁澤さんでした。悪党塩田主に売り飛ばされた少年は、その娘の美少女の奴隷(燈台)にされ、夜毎少女の快楽に奉仕させられる。2015/01/13
N島
16
澁澤龍彦の傑作小編『菊燈台』に、現代日本画の問題児『山口晃』が挿絵を付した奇跡の一冊。小説『菊燈台』は画家『山口晃』の出現を待っていたとしか思えません。…そう僕は確信致しました。またしても万人向けでは無い本ではありますが、一人でも多くの方に手に取って頂きたい一冊であります。2013/12/22
HANA
16
小説自体は以前読んだことがあるが、山口晃の時代を超越した摩訶不思議な絵と合わせるとまた違った印象を受ける。場面々々のチョイスもなかなか。前作の会田誠と違って今回は書き下ろしなので、絵と文が一段と合っているように思える。巻末の「少女コレクション」に付けた絵もできれば見てみたかった。2012/06/10
五十嵐文人
7
人魚と戯れていた菊麻呂は悪党塩田主に売り飛ばされ奴隷にされる。物語の冒頭は男達が海から塩を運ぶシーンで始まるが、この小説において男は自己を持たず、言われるがままである。果てに菊麻呂は燈台になり、頭に灯りをつける置物になる。反対に長者の娘である志乃は「待つばかりの女性」ではなく、支配的な立ち位置に立っている。解説では、これを父親からのリビドー的固着(エレクトラ・コンプレックス)の脱却と書かれている。若者を「置物」のように扱うことによって、志乃はアイデンティティを獲得しているのだろうか。(→)2023/07/16
Toshinao Maeda
6
澁澤龍彦と山口晃という組み合わせ、いいセンスしています。菊燈台という幻想的な小説を、山口晃の絵がますます不思議な世界へ読者を誘います。2012/02/29