平凡社ライブラリー
増補 洪水と治水の河川史―水害の制圧から受容へ (増補)

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  • サイズ 文庫判/ページ数 309p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784582766110
  • NDC分類 517.21
  • Cコード C0351

内容説明

川とは、人にとってどのような存在なのか。近代治水技術の発展と限界を歴史的・具体的に検証し、自然との共生をめざす治水のあり方、「溢れても安全な治水」とは何かを追究した画期的著作。脱ダム問題なども含め、近年の研究を踏まえた新論考「川の本質を考える」を増補した新版。

目次

第1章 近代治水の勝利と破綻(水防と治水;近代治水の功罪)
第2章 川の個性と水害(地質と河川の特徴;沖積平野を流れる河川の三形態;川を変える自然の猛威;川の流れと降雨;人の営みと水害の変化)
第3章 自然の制約と技術の限界下で―近世の川と水害(北上川の大改修と舟運体系;桂離宮にみる水害への対応;『百姓伝記』にみる水防・治水思想;利根川の舟運・治水体系と浅間山の噴火;信濃川・阿賀野川の分離と近世技術の限界)
第4章 近代技術の登場と水害への対応の変化(信濃川大河津分水;終わりなき利根川治水;ダムによる洪水の調節;治水計画と排水ポンプ;弱体化した水防)
第5章 自然と共存する水害への対応(総合治水対策;超過洪水対策;水害対応策のあるべき姿)

著者等紹介

大熊孝[オオクマタカシ]
1942年8月、台北市生まれ。引き揚げ後、高松、千葉、長岡、新潟に住む。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。工学博士。新潟大学自然科学系工学部建設学科教授。専門は河川工学、土木史。自然と人間の関係がどうあればいいのかを、川を通して研究しており、川の自然環境を守るとともに、治水・利水のあり方を地域住民の立場を尊重しながら考察している。NPO法人新潟水辺の会代表、通船川・栗ノ木川下流再生市民会議会長、水郷水都全国会議共同代表ほかを務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

Book & Travel

44
治水について少し勉強したくて手に取った本。伊奈忠次の利根川治水や桂離宮の水害対策から、近代、現代の治水技術の変遷とその功罪を詳細に追っていく。専門的な内容で全て頭に入った訳ではないが、自然が相手であり、各地域の利害が絡む治水の奥深さ、難しさを少し理解する事が出来た。河道改修やダム建設など「洪水をあふれさせない」対策には限界がある。ある程度水害と共存、許容し、被害を低減する対策をとるべきという著者の意見は、素人の自分には判断出来ないが、工学者ながら自然と人間の在り方を重視する主張には、胸に残るものがあった。2019/10/29

山口透析鉄

28
市の図書館本で。近代的な治水技術や詳細な天気予報で大規模な水害は減ったことは認めつつも、ダムなどを中心にした治水の限界について、日本の河川管理の歴史と実際に絡めてかなり詳細に書かれています。具体例としては著者の地元となった新潟の信濃川・阿賀野川た、未だに計画途上の利根川水系などが出てきています。 人口増加などにより、従来とは異なる場所に住む「分家災害」が増加したという指摘があります。 土木技術の限界もあり、江戸時代では「百姓伝記」に描かれているよう、自然を制圧するのではなく共存するための仕組みが伝統的な↓2024/09/14

ぼっこれあんにゃ

9
◎いい本です。治水について、その歴史や風土に踏み込んで、そのあるべき姿を示しています。その心は、氾濫させない川をつくるという現代の河川行政の思想ではなく、氾濫しても被害を最小限に抑えることを治水の根底に据える必要があるということです。確かに、平成16年7月13日の刈谷田川、五十嵐川の破堤氾濫で人が亡くなるなど大きな被害がでていることを考えると、破堤させない治水という著者の言に強い説得力を感じます。いわゆる技術の本ですので、若干読みづらいところもあるかもしれませんが、多くの人に読んでもらいたい本です。2010/04/30

とりもり

4
冒頭の「洪水」と「水害」はイコールではないという記述から、安易な思い込みを糺される。歴史を紐解き、洪水による水害を如何に防ぐかが検証される。そして、結論として自然を普遍的・画一的に捉えることの弊害を説く。もちろん、安易に「昔に帰れ」といったノスタルジーに浸るだけではなく、現実的な解決策も提示している。その思想は、「国破れて山河あり、国栄えて山河なし」という著者の言葉に集約されていると思う。2011/10/10

soto

4
近代治水の功罪を、江戸時代など、明治以前の治水を参照することなどで浮き上がらせ、これからの治水の方向性を見出していこうとする、非常に意欲的な作品。治水といえばダムかな、という狭い考え方を、これまでにない広い視点でとらえなおす。これぞ学者、ものが見えている人の仕事、と感じる。2009/07/29

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